♪こころ紡ぐ仲立ちのお話

♪こころ紡ぐ仲立ちのお話

園長: すぎもと かずひさ

 Aくんは三つ年下のBちゃんが好きなのでたたく、気になるからちょっかいを出す。ところが不思議なことに、時折、Aくんの乱暴さに泣かされることがあるにもかかわらず、BちゃんもAくんのことが嫌いじゃないようだ。それどころか、また泣かされはしないかと二人の距離を離さんとする保育士の心配をよそにトットコトットコAくんの後を追いかけて行く。

 おとなの思惑を超えて形成される、このような子ども同士の関係をわたしたちは大切に見守らなければならない。BちゃんにとってのAくんの魅力は、一体、何であろうか。Bちゃんにとって、三つ年上のAくんの活動は、きっと光り輝いているに違いない。他のおともだちからは味わうことのできないダイナミックな刺激、堂々とした態度。繰り広げられるあそびの数々に、そばにいるだけで見たこともないような感動を授かっているのかもしれない。

 このような日々の営みを見ずに、たとえば、瞬間のBちゃんの泣き声に過剰反応したわたしたちおとなが、Aくんに対していじめっ子のレッテルを貼るような理解をしたらどうなるであろうか?Bちゃんが二度と泣かされることのないように二人の関係を断ち切る手段を講ずるであろうか?問題はここにある。

 時は流れて、あの頃の乱暴がうそのようにBちゃんとあそび、優しく世話をするAくんがいた。AくんもBちゃんも、日常的な自然な関わり合いを通して、それぞれの付き合い方を学習したのだ。二人がともに成長したことが素晴らしいのである。これは決して関係を回避する方法では得ることのできない宝である。人間関係を選択しきれない社会において、子どもたちみんなが受け容れられる、関係をつなぐ、こころ紡ぐ、仲立ちでありたい。

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