♪心の国際化のお話
園長: すぎもと かずひさ
米シリコンバレーにおいて科学技術の頂点で活躍する人たちのほとんどが、地球人口の3分の1強を占めるインドと中国の人たちである。人口が多いのみならず、ご存知のようにインドでは、早くからIT時代に備えて数学力をアップする教育を主眼のひとつとしてきた。彼の国では、二桁の九九(1×1~99×99)の計算を日本の小学校期にマスターする。時代の潮流を読み国家施策として取り組んできた成果が顕著にあらわれてきているのである。反対に日本人は国際社会の中での競争力をますます失ってきている。日本人の世界舞台への台頭を阻む大きな要因は、英語力の弱さであるといわれる。しかし、専門家の報告によると単に英会話等の英語力の問題ではなく、むしろそれ以前の心のひ弱さが原因であるというのである。すなわち、新しいものへの好奇心、異なる人やものへの興味や関心、いろんなことにチャレンジする冒険心など、どんな人とも親しくなれる、どんな場面や状況にも向っていける、そのようなことに向っていくことが好きだ、というような新たな局面を自ら切り開き、環境の変化にも積極的かつ柔軟に対応しうる能力に欠けるというのである。
ところが、日本はまったく逆の方向に向って進んでいる。深刻な少子化や子どもを取り巻く凶悪犯罪の増加等の社会への不信感が原因となって、大人の心配が膨らみ、目を掛け、手を掛け、子どもたちにとってますます過保護な状況をつくりだしている。国際的なことはさておき、国内の将来をちょっと考えただけでも、0歳児出生人口が120万人、昭和22年生まれの人たちが77歳を迎えたときの人口が170万人という人口分布からみて、これからのこどもたちには『たくましさ』が否応なしに求められるのに、である。 加えて20歳代を中心とした若年層のひきこもり人口が100万人以上という現実がある。欧米ではあり得ない状況に「彼らはどうやって食べているんだ」「なぜ親は家から追い出さないんだ」というのが率直な欧米人たちの感想である。小中高生の心の病も増加の一途をたどる。これも大人たちの過干渉や一貫性のない関わりが大きな要因のひとつに挙げられている。 こどもは、親の所有物ではない。だから自立を促す援助が必要だ。『心の国際化』は、とりもなおさずわたしたちの大人の課題である。