探検のご褒美のお話
園長: すぎもと かずひさ
三室戸駅周辺の混雑が紫陽花のころを告げる。わたしの小学校時分、三室戸寺は宇治川写生大会のポイントのひとつであった。また、保育士になってからも、無料拝観だったころには子どもたちを連れて園外保育によく出かけた。グリコじゃんけんをしながら石段を上ったり、釣鐘堂付近で蟻地獄の巣を見つけたりしては、無邪気ないたずらに付き合ったものだ。 園外保育にもさまざまな段階がある。赤ちゃんが大型乳母車に乗って散歩する先陣ヶ丘町内は、3歳未満児さんの主たる園外保育のフィールドである。ここでは、のんびり子どもたちの興味の赴くままに散策するのがねらいである。2歳児さんになると行動範囲は大きく広がる。三室戸保育園であれば、三室戸駅の東裏にある三室戸広場とさらに少し東側に入った三室戸公園であり、Hana花保育園では宇治橋商店街になる。ほんの少しの遠出で交通ルールを守りながら目的地まで行くというねらいができる。さくらぐみさん(2歳児)は、こうして力をつけ、宇治川堤防を経て、やがて大吉山を目指すのである。かつては、現在の源氏物語ミュージアムの場所に関電広場と呼ばれる大きな児童公園があり、時間に余裕のないときや大吉山までの往復がしんどいさくらぐみさんたちには格好の遊び場であったのだが、もうない。 さて、3歳児になるといよいよ大吉山だ。大吉山にもいろんなコースがある。ミュージアム側から野鳥のうたにつつまれた緑のトンネルを抜けて頂上を目指す。眼下に広がる世界遺産に向けてお決まりのヤッホーだ。鳳凰もこの空を飛んだのだろうか。朝日山観音に上るもよし、興正寺に抜けるもよし、はたまた志津川を目指すもよし。枝道を探検するもよし。 身近で知らない宇治のまち。路地、住宅街、遊歩道、いろんなところを練り歩く。いろんな人に会う。子どもたちに声を掛けてくれる。笑顔を送ってくれる。探検のご褒美に子どもたちの足も心も丈夫になる。※ 地域にお世話になっている子どもたちの光景を想像して、送迎時の駐車マナーをはじめ地域の方々とのよりよき関係づくりにご協力いただきますようお願いいたします。