♪「おっちゃん びぃーびぃー」のお話

♪「おっちゃん びぃーびぃー」のお話

園長: すぎもと かずひさ

「おっちゃん びぃーびぃー」とはご近所に住まわれているおっちゃんのあだ名である。保育園の子どもたちの造語ではあるが、いつ造られたのか定かでない。誰かがつけたというよりだれかれとも無くいつしかそう呼ぶようになって、親しみが込められた子どもらの声を伝って今に受け継がれてきた由緒正しき呼び名なのである。

 その主である「おっちゃん びぃーびぃー」が天に召された。三室戸保育園創立以来35年もの長きにわたって、子どもたちとのあそびはもちろんのこと職員の様子を心配していただいたり保育の環境に気遣いをいただいたりなど園運営を影ながら支えてくださった大恩人の死にわたしたちの悲しみは深い。卒園式前日、担任からの報告に子どもたちは涙した。ベテラン職員は就職したてのころからの励ましや心配りを思い起こして目頭を熱くした。    

 日頃、子どもたちは地域の方々や園外の関係者に思いのほかお世話になっている。「おっちゃん びぃーびぃー」はその筆頭であった。園に遊びに来てくれるだけでなく、地域行事やお散歩のときでも園児のことを気にかけてくれていた。このような人との絆によって子どもたちは渡る世間への信頼感を育んでいくことであろう。

 園庭に人だかりよろしく、「子どもだかり」ができている。その中心に「おっちゃん びぃーびぃー」と懇意にされていたご近所の方の姿があった。子どもたちに竹とんぼづくりを教えてくださっているのだ。陽だまりに「そや、みんなでなかようしたらええんや」と「おっちゃん びぃーびぃー」特有の少しかすれた声が蘇る。「おっちゃん びぃーびぃー!!」子どもたちが呼んでいる。みんな!「おっちゃん びぃーびぃー」につづけ!!

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