♪「ある保母の日記」のお話

♪「ある保母の日記」のお話

園長: すぎもと かずひさ

つぎに紹介するのは、昭和48年開園当時のある保母の日記から抜粋した言葉である。
 就職一日目・・・
『学生時代には収容施設ばかりに行っていたので暗いイメージを抱いていたが、保育園は明るい。家庭があるということが、子どもたちにとってどんなに良いものであるか、あらためて知ったことである。』
 就職二日目・・・
『Kちゃんが大便を洩らした。汚れ物を洗いながら、これも保母になった証だと感慨深く思ったことである。大便の洗濯など生まれて始めてである。それを素手で洗いながら、「保母になった証である・・・」などと感慨深く思うなど使命感とは恐ろしいものだ。』

 短大を卒業したての経験も力もない彼女が使命感に支えられた勇気を持って、「児童福祉=子どものしあわせ」を探究するという限りなき大海に漕ぎ出でた旅立ちの詩である。彼女は就職二日目にして家庭と協力・連携することの大切さと保育原理の一端を学んだ。  よそ行きではない、ありのままの子どもたちとふれあう喜びは、見た目の美しさに程遠いことの多い日常において、汚いこととも思えるような行為の中にさえ美しさを発見させる。汚れ物を素手で洗いながらしみじみと思う彼女の感慨こそがいずれの知識にも勝る「子育て=保育」のスピリッツであり専門性である。
*引用した日記文中に、現代において不適切と思える表現がありますが、当時のニュアンスをお伝えするために原文のまま掲載しています。ご了承ください。

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