♪「星の王子様」のお話
園長: すぎもと かずひさ
卒園のときを迎えた。「85歳になった今でも、子どもを育てるというのは生涯の熱狂的体験だった」「教育する‐教育されるは、どちらかが先なのではなく同時に行われる一つの言葉である」「親‐子は互いに影響しあっている、子どもの存在こそは親が教育される歴史である」という鶴見俊輔氏の言葉はまさに保育者としての実感である。
さて、どんどん大きくなる子どもたちといっしょにわたしたち大人が成長するとはどういうことであろうか。わたしはつぎのように考えている。それは一人ひとりの大人が、有名なサン=テグジュペリの『星の王子様』の一節「かんじんなことは、目には見えない。心で見なくちゃ、ものごとはよくみえないってことさ」という感覚を身につけていくことではないだろうか。日常の一人ひとりとの出会いがあらゆるしあわせ=福祉実践の出発点であり、その延長線上において「恒久平和の社会を実現する」という夢を見ているからにほかならない。
「挨拶しても、無視される」「親切にしても、けむたがられる」など納得のいかないことの少なくない世の中ではある。そんなときこんな声が聞こえてくる。「いいかい、単純に非常識な人と決めつけちゃいけないよ。決めつけた途端にその人は悪者になってしまうからね。人にはそれぞれにいろんな事情があるもんなんだ。人には言えない、目に見えない事情があることを慮る気持ちがやさしさっていう心のはたらきなんだよ」と。そんな大人たちのやさしさの背後にこれから大きくなりゆく子どもたちの笑顔がある。