♪「故郷への愛着と子ども心」のおはなし

♪「故郷への愛着と子ども心」のおはなし

園長: すぎもと かずひさ

 「私に詩思を与え、私の少年時代にしてなおかつ思索にふけらしめたのは、なんであろうかと私は考えてみると、故郷の山川である。・・・・・ことに私の生まれた町の龍野は、山紫水明で四季の風物が諧話している。少し高いところに登れば、間近くに瀬戸内海の紫色の景色を瞰望することができる。・・・・・山の景、海の景、河の景、平野の景、さらにまた加えれば町の景をも見のがすことができぬ。(三木露風『我が歩める道』より・昭和3年)」
 
 童謡「赤とんぼ」の作詞者である彼の故郷兵庫県龍野市を訪ね、この言葉の前に、なんとも言えずこみ上げてくる切なさがあった。龍野にて我が故郷宇治を思う。小学校時代の一時期を過ごした北海道、北見を思う。この切なさは故郷を愛する誰の胸にも宿るものではないだろうか。故郷への愛着は各々の心の地平を伝わり、地球規模で広がっていく。町の景には、そのことを祈らずにはいられない親しき人々の姿がつぎつぎと思い浮かべられたことであろう。子どもたちは心の故郷である。童謡は心の故郷を歌う。そんな彼の子ども心が綴られている、一篇の詩を紹介しよう。
毛虫とり
毛虫、毛虫、栗の木の枝に、毛虫が寝てる、むくむく毛虫。毛虫を落とせ、揺すぶって落とせ、雨の露ばらばら、毛虫もばらばら。落とせ落とせ落とした毛虫、雀にくれろ、泥ん中へ埋めろ。むくむく毛虫、花のわき、はっている。
 
 こんなささやかな現実に子どもの心は捉えられている。毛虫のいる木、木の生えている栗林、栗林のある山。毛虫は私の子ども心を這って、望郷の琴線にたどり着く。 私も歌をつくる。今年の運動会テーマはHana花保育園 (3歳未満児)が「はっぴー 脱皮 団子虫」、三室戸・Hana花保育園(3歳以上児)が「青空リュックは魔法スカイ」である。私の子ども心は団子虫のように転がり、自由に青空を飛びまわっている。

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