♪「小さなクリスマス・ツリー」のおはなし
園長: すぎもと かずひさ
恒例となった宇治田原産の柿の木がクリスマス・ツリーにおなりにやってきた。彼の地は年長のゆりぐみさんが初夏には茶摘み体験をし、後日その茶葉でお茶会を催したり、晩秋には干し柿をつくる柿屋見学をし、名産の古老柿を美味しくいただいたりした馴染み深い場所である。その柿の木じゅうを子どもたちは夢一杯に飾りつける。
ところで、今年はもうひとつ子どもたちの心を紡ぐ温かなクリスマス・ツリーづくりを企てている。日々の保育園生活で子どもたちが優しいこと、楽しいこと、うれしいことを経験するたびに、野山で集めてきた小さな木の枝を一枝ずつ積み上げてゆく計画である。子どもたちの精神性は行動とともに宿る。ぽかぽかの体験の記憶とともに木の枝を積み重ねてゆく瞬間、子どもたちはどんなふうに各々の心に染み入らせることであろうか。可愛らしい小さな手が、見守る一人一人の瞳が、さらに温かさを放ちながら寒い季節にぬくもりの火を灯すに違いない。
横浜国立大学名誉教授の伊藤隆二氏は、性善説でもなく性悪説でもなく、人間が正しい生き方に目覚めたとき、恒久平和を目指す一人としてより善き生き方に向かう人間観を「向善説」という言葉で表している。さまざまに暮らす人間は一人一人異なった生き方をしている。子どもたちも同様である。いいことをしたかと思えば悪いこともする。悪いことの体験から善きことを学ぶ。悲しみの体験からやさしさを理解する。行きつ戻りつの螺旋階段はつづく。新しいツリー計画は階段の途中に設けた善きことを応援する手すりであり、こころの贅沢である。おっと、子どもたちには内緒なのでぜーったい教えないでね。