♪「共生の喜びと感動に満ちた初日の出」のおはなし
園長: すぎもと かずひさ
「遊べていない子どものもとに行こう、真っ先に情緒が不安定な子どもの隣へ行こう。その様子を見ているまわりの子どもたちも同じ境遇になったとき、ひとりとして違わず愛情にみちた保育がうけられるという安心の灯をともそう」という保育実践における考え方は、社会における弱者救済が、いつだれの身に降りかかるか分からないすべての人々への配慮であり、安心の施策であるという考え方に等しい。アメリカの心理学者E・Hエリクソンは「成長途上の子どもは、経験に対処する自分独自のやり方が、自分の所属する集団の一成功例であるという自覚を通して生き生きした現実感を獲得することが重要である」と説いている。保育園のすべての子どもたちが成功者となるためには総体的に一人一人の子どもの多様性を認め包括的に保育する保育者の態度が不可欠である。子どもはさまざまなことを身につけながら生きてゆく。そのプロセスには挫折がつきものである。できるようになることの喜びとともに自分のできなさについての挫折を幾度となく味わう。子ども同士の人間関係の中で気に入られたり嫌われたりしながら、厳しさとやさしさを学ぶ。
一方、そのような中であっても大人の配慮により、さほどの挫折感を味わうことなくむしろ自尊心や集団への貢献感を満たしながら生きる道がある。それが、さまざまななかまとの共生であり協働である。さまざまな人々が共存する社会のしなやかな強さとは人間存在の多様性を相互に受け容れていく過程で各自が体験的に学び取っていくおおらかな強さであり、グローバルへとつながる神聖な広がりである。この共生を目指す道のりで子どもたちもおとなたちも感性・感受性・共鳴性・心優しさ・情け深さ・おだやかさといった平和を愛する人間性を育んでいくのである。新たな年が共生の喜びと感動に満ちた年とならんことを期待する、初日の出。