「未来に夢を描ける国づくり」
園長: すぎもと かずひさ
「子ども国保無保険救済法案」「母子加算復活法案(生活保護を受けているひとり親世帯に支給されていた母子加算(月2万3000円程度、父子家庭にも支給)」など、国会においても日本における「子どもの貧困」の問題が取り上げられるようになってきた。喜ばしいことである。親の所得や生活背景によって、罪のない子どもたちが、最低限の医療・福祉・教育の機会を奪われることがあってはならない。これらを無視して日本の未来を語ることなどできないことは、誰しもが体験的にご存知の通りである。子ども時代の悲しく辛い経験や嫌な出来事はずっと後になっても尾をひくものであるし、幼い頃の友の泣きべそは、切なく後味の悪い思い出として心に残るものである。今、あの友やなかまはどんな暮らしをしていることであろうか。願わくは「子どもたちに笑顔の思い出を」と保育環境を整える。
少子化・地域の空洞化が叫ばれるようになって久しい現代にあって、保育園は地域の代わりに、さまざまな子どもや家庭の交流の場としての機能や役割を求められるようになってきた。子どもが少ない現代においては、ともだちとはじめて出会う場所が保育園であることは珍しくない。子どもは子どもの中で育つ。子どもの社会性は社会の中で育つ。さまざまな人との出会いによって人間は人間らしく、さまざまな人との関係性を広げながら社会的成長を遂げていく。
阿部彩は、「子どもの貧困」という著書の中で、子ども時代の暮らし向きがその後の学歴や生涯所得に大きく影響を与えていること、日本の大人が欧米諸国の大人に比べ、子どもたちの生活必需品として、子どもたちにより良い成育環境を与える意識の低いことについて警鐘を鳴らしている。また、その効果的な国家施策のひとつとして、子どもたちの最初の「貧困の防波堤」的役割を保育園が果たしているとして高く評価している。そして、保育所、公立小・中学校において貧困対策が行われてこそ、高等教育の無償化の効果が充分に発揮されるとつづけている。
そのこころは、すべての子どもが「未来に夢を描ける国づくり」である。