「天才を発揮するこころの形」のお話

「天才を発揮するこころの形」のお話

園長: すぎもと かずひさ

 赤ちゃんのほっぺがおっぱいでつぶれている。だっこで、もたれかかるその満足気な表情に保育の原点を見る。温かな掌で包まれてほっぺで聴く鼓動はいのちの共鳴を伴ってこども心の原野にしみこんでいくことであろう。だっこするおとなの方もまたこどもの安心の表情にたとえようのない喜びを感じたり時には励まされたりもする。だっこされてうれしいこどもとだっこするのがうれしいおとながこころとこころを通わせながら、少しずつ人間世界を広げてゆく。  1歳児さんと戸外に出る。今日はシャボン玉あそびである。こどもらの視線を確かめいたずらっ子さながらのワクワクしたそぶりでシャボン玉を風に乗せる。大空を飲み込みそうなほどの口を広げて感動の声である。鯉のぼりを掠めて昇るシャボン玉の行列に小さな手を目一杯伸ばす。届かない。それでも、こどもたちの気持ちはかわいい指先をはるかに飛び越えてシャボン玉といっしょに風に泳いでいるようすである。こども心がどんどん大きくなってゆく。   

こんなシーンを見るたびに、わたしは原点に立ち返る。能力はここから生まれるのだと。この子のこころの形はどんなであろう、安心に満ちているであろうか。この子の好奇心はどんなであろう。楽しいことや好きなことをたくさん見つけているかな?こども心はときにひしゃげたり割れそうになったり、シャボン玉のようにいつも頼りなく形を変えている。一人一人のこどもたちが自分自身の天才=手持ちの力をいかんなく発揮するこころの形。

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