『太陽の体験』のお話
園長: すぎもと かずひさ
子どもらの好き好きに遊んでいる様子は本当におもしろい。
他に広いスペースがあるにもかかわらずひとつの鉄棒に5人ものともだちがひしめきあって座っている。
さらに加わろうと鉄棒の足にしがみつく子がいると思えば、その子に抱きつく子どもがいる。
この素直で自然な人間関係の広がり・深まり・高まり・つながりは子どもの特筆すべき長所であろう。
さらに、きっと鉄棒の上は気持ちいい。
子どもは居心地のいい場所を見つける天才である。
自分の身長より高い場所から眺める空や風景といった視界の格別感、高所ゆえに感じる風の心地よさ、その風にのって薫る初夏の匂い、ともだち同志が肌摺り寄せながら交わすおしゃべり、すべての要素が心地よさを盛り上げる環境に見えてくる。
別の場所では、砂山ならぬ土山の二つ並んで谷をつくっている場所に5枚ほどの板を用いて橋を架け、三輪車で運転手と押し手二人一組になって幾度も繰り返し渡っている。
わざわざ難所に仕立て上げ、その上を渡り、小さなスリルを堪能しているのだ。年長児ペアの様子を見て、3歳児ペアもチャレンジする。
年長児さんが板を架けて作った橋は遊園地のアトラクションさながらである。
泥のぬかるみ、わずかな凸凹さえも子どもの好奇心は逃さない。かしこい瞳をくるくるさせながら左右巧みにハンドルをよりおもしろい方へと操り「わぁー」「きゃー」と叫んでいる。
前の子も後ろの子も一心同体、嬉々として楽しんでいる。この体験が大切なのだ。
好きなともだちがいる。
ともだちと過ごすひとときは楽しい。
そんなともだちが一人二人と増えてゆく。身の回りに好きな人が増えてゆく。
泣いていたともだちが笑顔になるとうれしい。
「あなた」の喜びは「わたし」の喜びを実現するために欠かすことのできないこととして認識されてゆく。
このようにして喜びの共感はやがて共生社会の成員として生きる上での自覚につながってゆくのである。
夏である。水あそびを通して子どもならではの裸の付き合いが始まる。
子どもたちの活動がさらに活発になり、躍動感に満ちてくる。
身も心ものびやかなる仲間同士の共感は実に素晴らしい。
全身全霊で自己表現したもの同士が大きくわかり合う。
喜びに満ちたかけがえのない幼児期の体験、太陽の体験である。