『夢の山』のお話

『夢の山』のお話

園長: すぎもと かずひさ

「宝ヶ池子どもの楽園」の真ん中には名物「夢の山」がそびえる。恒例の園の遠足はもとより、子ども時代からよく遊んだこともあって、訪れるたびにさまざまな思い出がこみ上げてくる。昭和39年5月5日こどもの日の開設といえば、東京五輪が開催された年である。当時の関係者の方々は、子どもたちにどんな夢を託し、思いを描いていたのであろうか。さて、遠足。あそびを待ちわびている子どもたちは「安全に・・・」「なかよく・・・」等の諸注意を一所懸命聞いている風であるが、内心は遊びだしたい気持ちでいっぱいだ。「遊んできていいよ」の合図が終わるや否や、まっしぐらにシンボル「夢の山」を目指す。あっという間に「夢の山」一面に子どもたちが群がり「子ども山」に変わる。「夢」の実体はやっぱり「子どもたち」やったんやと、気づかされる。設計者のねらい的中である。

「夢の山」はあそびの包容力に富んでいる。高さは7mほどであろう。斜面は①歩き始めの子どもでも上り下りが楽しめるような段差の少ない緩やかで踏面を広くとった手すり付き階段ゾーン②①の両側に広がる転倒時の衝撃吸収性に優れたゴムチップ製緩斜面(ところどころに樹脂製突起物が配され手がかり足がかりとして冒険の手助けをする)③直径20~40㎝程の丸石で組まれた急斜面、から成っている。これらが横並びに続いているお蔭で、急斜面から登りはじめ、怖くなったら緩斜面へ移動する等、子どもたちは自分自身の心と相談しながら、ときには安全に、ときには勇気を出し、思いのままに幾通りものアプローチを楽しむことができる。

頂上には地上まで約10mの距離を一気に滑り降りることができる大滑り台が2本、中腹には低年齢の子どもや5、6人の子どもが一度に滑ることができる人研ぎ滑り台が設置され、さまざまなレベルの子どもたちの、さまざまなあそびを誘発している。この懐の深さが「夢の山=子ども山」の肝であり、「環境を通して行う」乳幼児保育の方法との合致を見る。包容力のある環境はすべての子どもを受け容れる平和の環境である。

四つ這いの、へっぴり腰の、固まって、繰り広げられる冒険の一つひとつが幸せである。普段しない姿勢や挑戦が生み出す新たなあそび。地上に降りた安ど感と達成した自信。子どもたちの表情に、今してきたばかりの数々の経験と刺激が映っている。

※三室戸・Hana花は、去る10月28日に行ってきました。みんなのきは来る11月5日に行ってきます。

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