「喜びの気を集めよう」のお話
園長: すぎもと かずひさ
クリスマスを飾った3歳以上児さん作のクリスマスツリー「通称:喜びの木」は、自尊感情が他国と比して明らかに低いといわれている日本の子どもたちのなかで、せめて、自分たちが深くかかわり保育する子どもたちは自己肯定感と誇りを持って育って欲しいとの思いから始まった。
「喜びの木」の素材は、子どもたちが戸外あそびや散歩等で見つけて集めてきた木々の枝や木切れたちである。
これを子どもたちはうれしいことや楽しいことの思い出とともに、一本一本土台の上に積み重ねていく。
あそびの副産物である木の枝や木切れを用いることにした理由は、子どもたちにとって素材そのものが楽しい思い出のシンボルだからである。
3歳児さんになると、いよいよ「喜びの木」づくりが始まる。
しかし、まだまだ自身の経験を十分に語ることはできない。
そこで、担任は日々の子どもの活動のようすから、日ごとに紹介したい場面を選択し、その場面に関わった子どもたちへのインタビューを通じて、何がうれしく感じたのか、なぜ嬉しかったのか等々をクラスの仲間に紹介していくのである。
さて、数日前の3歳児クラスでの出来事である。
木製汽車を4台使って遊んでいたA男のところへB郎が「貸して」とやってきた。A男は黙ってあそび続けているが、明らかに葛藤している表情である。
「貸して、貸して、貸して・・・」B郎はと続けざまに発する。
ますます困惑顔のA男であるが、しばらくして、悟ったように自分が使っていた4台すべての汽車をB郎に貸してあげたのだった。
担任はこの姿に感動して、みんなに紹介しようと決めたのであった。
降園前の集まりの場である。
担任はその時の様子をクラスの仲間に紹介した後、インタビューを始めた。
最初ははにかんでいたA男も少しずつ担任からのインタビューに答えていく。
みんなの前で話すことは勇気のいることだ。
最後の質問になった。
担任は気になっていた貸してあげる際にA男がB郎につぶやいた一言について「何て言ったの?」と尋ねた。
するとA男は「また、つぎに貸してやって言った!」と笑顔で答えたのであった。
そして、その言葉を言ったことがまたうれしかった、と答えたのである。
インタビューが終わり、A男が小枝を足し重ねるシーンになる。
仲間の目は釘付けである。
他者の興味に関心を持つ心情や態度が豊かに育まれていることが良くわかる。
「喜びの木」に良い気が注がれている。
新たな年も、子どもたちとそこに関わる人々の「喜びの気を集めよう」。