『子ども語りの物語のお話』のお話

『子ども語りの物語のお話』のお話

園長: すぎもと かずひさ

春の「土あそび」、夏の「水あそび」、秋の「自然素材あそび」を経て、冬の現在は1年のしめくくりとして「表現あそび」をメイン・テーマに掲げ保育を展開している。これまでの3期で培ってきた園生活をもとに、子ども自身がさらに明確な主人公となって、眼前の「ひと・もの・こと」との関わりから子どもらしさに満ちた幻想的・空想的即興表現を繰り出し、遊びこもうというものである。殊に3歳以上児は「童心のつどい(表現あそび発表会)」として、無数に繰り出される表現あそびの中から抽出した内容を、舞台表現に昇華する。さて、子どもの表現あそびにおいて、わたしたちが徹底的に大切にしているポイントについて紹介しよう。ひとつは自由とあそびごころの保障である。子どもの表現は、概念的・観念的囚われのない自由の原野から生まれる。また、あそびの真骨頂は面白さに尽きる。あそびごころがないと創造は生まれない。その発想・表現を貴び、生かしきろうとする大人の愛情と器量が何より重要である。ひとつは鮮度の保障である。子どもの表現は即興性・発展性に満ちている。決められたことの繰り返しは面白い内容であっても徐々に色褪せ、飽きを生む。だから、決められた台本は使わない。子どもの活動から台本のようなものを一旦作成はするものの、その後、子どもの表現やリクエストに合わせて都度更新していく。鮮度を保つことで躍動的な子どもの表現が持続的に実現する。ひとつは個性的表現の尊重である。子どもの表現は、表情、発声、身体状況はもとより、一挙一動が丸ごとの個性である。父母、家族等身近な人から受け継がれた動作や仕草、また、ぎこちなさや緊張、興奮等から生まれる表現の一つひとつにいたるまで、その子、その場、その時ならではの貴重な表現として大切に受けとめ、ありのままに生かす。そして、最後に子どもの主体性の尊重である。子どもは、誰しも、自らの人生を自ら歩んで行く。子どもの主体性、自信、自己肯定感は、幼いころから数々の場面を自分自身で乗り越え、くぐり抜けてきたという経験に裏打ちされる。また、それらを支えるものは、その時々を共にした仲間や身近な人々のあたたかなまなざしである。

1年を振り返る。土、種、苗、花、実、それぞれの植物の成長、農家の方々。さらに蟻、だんごむし、蝉、飛蝗、蛙等々、生き物との対話。子ども語りの物語のファンタジーを彩る役者たちである。

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