『藍の便り』のお話

『藍の便り』のお話

園長: すぎもと かずひさ

大雨への警戒がゆるまない。全国各地で被害にあわれた方々には、ただただお見舞いを申し上げるばかりである。

京都府保育協会の仲間うちでも福知山の三つの保育園が床上浸水等の被害にあわれ、保育の再開と復旧作業に懸命の汗を流しておられる。先の土日には、三室戸・Hana花・みんなのきから1名ずつ福知山へボランティアを派遣し、民家および側溝の泥だし作業等のお手伝いをしてきた。         参加の職員は異口同音、あらためて、その恐ろしさと復旧作業の大変さ、被害にあわれた方々の

心理的ダメージの少なくないことを痛感したとのことであった。

福知山は、先月号でも紹介の通り、現在保育の中心的テーマのひとつとして取り組んでいる「藍染」について指導いただいている「福知山由良川藍染同好会」の方々の拠点である。

市内中心部冠水の一報を聞いて8月16日夕直ちにメールにて連絡をとる。「被害の全容はわからないが命は無事」との返事に胸をなでおろすものの心配は尽きない。

そして、翌々日、新たなメールが届く。「・・・市全域のかなり広い範囲に浸水被害が広がりました。一晩中豪雨と地響きのする雷が絶え間なく続きました。怖い夜でした。市内のごく一部を回ってみましたが床上まで浸水箇所が多く大変な惨状です。・・・みんなで復旧に頑張るしかありません。・・・私の藍の畑は完全に2mの水に浸かりました。水が引けば藍は大丈夫です。手間はかかりますが泥を落とせば2番藍が収穫できます。強いものです・・・。」との内容であった。膨大な手間をものともしない言いっぷりに藍への思いとともに案じる私たちへの心配りがなおも感じられた。

ゆえに伝統文化は尊い。古の昔から幾度となく繰り返されてきた苦難の歴史を思う。福知山の藍は一度絶えた、にもかかわらず、心ある方が中心となり、多くの人の手を伝い紡がれてきた再興の20年の月日。その伝統と文化の上に私たちの保育は芽吹いている。

伝統・文化に根差した保育は分厚く奥が深い。日本の子どもの原体験として大切なことは、こうした本物の本質に触れ、交わり、子どもの文化として内容を再構築・体系化することであろう。

福知山からメールが届く。今後、本格化する保育の工程を案ずる「藍の便り」であった。子どもたちに話そう。メールの部分は手紙にして伝えよう。子どもはどんな風に受けとめるだろう。 

遠くにいても子どもの笑顔が大好きな人、自分たちを気にかける人がいることを。

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