『童心の持つ力なり』のお話

『童心の持つ力なり』のお話

園長: すぎもと かずひさ

2月になれば彼女は・・・彼らは・・・。生まれてから今日までの経験の一つ一つをひっさげて「童心のつどい」という名の表現あそび発表会に登場する。3歳児、4歳児、5歳児の年齢ごと、みむろど・Hana花とみんなのきの園ごとにそれぞれテーマや題名は異なれど、こころは同じ、童心に満ちて生き生きとした世界を表現するに違いない。

子どものあそびは身近な生活から。身に纏う衣服、食器、寝具、家具、電化製品、さらにおもちゃ、その他の部屋や家にあるものが彼らの接する環境のすべてと言っていい。

さて、生活を振り返る。わたしたちの日常の中で、日々、作られ、生産され、創造されつづけているものやことはどのくらいあるだろう。生活にまつわるほとんどのものが商品として流通している現代。時に、あるいは人によって、手芸、装飾、日曜大工、アート等を行うことがあるかもしれないが、毎日となると料理を除いてほとんどないのではないだろうか。多忙な日々を考えると料理でさえ外食や中食に頼らざるを得ない現状があるだろう。まさに、手づくり、手わざの危機、子どもにとって目の前で物が作り出される体験、表現と創造に接する機会、手間によって育まれる愛着やひとつのことを成すための手順、段取りの重要性といったプロセスを学び、味わう経験の場が極端に限定されているのである。

このような現状を踏まえ保育内容を吟味し、環境の構成を試みる。目指すは、表現と創造のプロセスにいかに子どもを巻き込み、いっしょに楽しみ、味わうことができるか、である。

もだえる保育士、まず、おとなが創造の主たることを求められる。歌う、話す、踊る、ジェスチャーする等、自らの無形の表現力を向上することに加え、日々の保育の終了時には明日のあそびに備えて新たな素材を用意しなければならない。集めるだけでも難しい。適当なものが見つからない。自然の木の実や枝、葉、自ら栽培した草花たちの貴重さをあらためて思う。また、「ごみは宝」。リサイクル可能な素材は身の回りにふんだんにあり、あそびの素材、対象として子どもが自由に扱っていい素晴らしきことに気づかされる。

子どもたちの表現と創造三昧の日々は、一人一人の個性的創造的活動が尊重された環境の中で、自ら種をまき、芽を出し、花を咲かせ、実をつける。一人一人の好奇心が集まってくる。意欲に満ちた活動に感動はつきものだ。感動は集中を一気に超えて夢中へと誘う。その渦の中で仲間の関係が親密になっていく。げに、童心の持つ力なり。

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