『自慢の制服』のお話
園長: すぎもと かずひさ
三室戸・Hana花保育園には自慢の制服がある。
2004年春の参観日。2000年から始まった恒例の人気行事「野染め」でお世話になっている「染のおっちゃん」こと斎藤洋先生のご指導を得て、当時の子どもたち、保護者、職員が色とりどりの染料、刷毛を躍らせるようにして染め上げた布を素材に仕立てた制服がそれである。
以来、12回の制服引き継ぎ式を経て、今年で13回目を迎える。小学校入学を控えた年長児さんから次の保育園リーダーとなる年中児さんへ、ゴルフツアー主催者から優勝者へ優勝ブレザーを贈るように袖を通し、ボタンを留め、着せてもらうと照れながらもうれしい年中児さん。窓ガラスや鏡に自分の姿を映しては眺める仕草が可愛くも誇らしげである。この制服に袖を通した子どもの歴史がさらなる由緒を築いていく。
野染めの布は18mの長い布を大勢かつさまざまな色を使って染める。同じ色、同じ刷毛目の場所がない。ゆえに、仕立て上がった制服の一着一着は世界にひとつの風合をもつ。それは尊ぶべき子ども一人一人の個性と同じだ。人間の根となる幼児期を共に過ごした仲間のつながりのように、みんなで着用すると、もとは一枚の布であったつながりが蘇る。「野染め」を体験したときの子どもの躍動感や歓声と、眼の前で活発に動き回る子どもの姿が制服を着るたびに協奏曲のように流れ出す。
そして、今年度。17回目の野染めはみんなのきの番であった。みんなのき保育園ではじめての年長児さんとなる子どもたちへ新たな自慢の制服をつくる計画が始まった。デザインの基本コンセプトは、三室戸・Hana花同様、子どもの保育活動をそのままに、である。春の参観日に子どもと保護者、職員で染めた「野染め」の布はお腹と背中部分に、袖には子どもと職員がこの一年取り組んできた藍染の布を用いた。ついに、完成、出来上がりは上々である。
16年越しのお付き合いである染のおっちゃん。おっちゃんの展覧会で紹介をうけた福知山の由良川藍同好会の花城さんご夫妻。デザイナーさん、仕立て屋さん。数々のご厚情に感謝は尽きない。
これから幾人の子どもがこの制服の袖を通すことであろう。三室戸・Hana花・みんなのきの保育の理念と保育の伝統は多くの方々のご尽力の上に成り立っている。昨春の土づくりに始まった藍の物語に協力いただいた保護者のみなさんがいる。その地平にゆれる草木のいのち。子どもの原体験・原風景、自慢の制服である。