『 光と影のプロセス 』のお話
理事長 すぎもと かずひさ
プロセスを大切にするとはスタイルを大切にするということ。スタイルそのものに楽しさや味わい、美学がある。保育の指導計画においては意図的にその内容を決めないようにしている部分がそれである。何が起こるかわからない嬉しさ、未来を創る喜びを子ども自ら味わってもらいたいという願いが秘められている。
子どもが今、出会い、体験しようとしている世界が体験を重ねても、あるいは重ねるごとに、わくわくどきどき新鮮な好奇心を掻き立て、活動意欲を一層盛り上げていく感動と充実に満ちた体験。子どもたち自身が自分たちの未来をイメージし、考え、知恵を出し合い、決定・生成していく自由と責任のプロセスは、「試行錯誤の連続、失敗はチャレンジの証、成功の道しるべと喜びながら自らの願いを実現していく道」であり、「仲間と協働し、互いの存在を認め合い、共感性を高めながら思いやりを育む機会」であり、「自己の決定に基づいて結果、即ち、自分の人生を引き受ける覚悟と自信を培う主体的・能動的学びのステージ」である。
クリスマス・ツリーとなって登場する「喜びの木」は、3歳以上の子どもたちが今日の嬉しいこと、楽しいことを集めて創る。今日どんなことが起こるかわからない。「きれいな石を見つけて嬉しかった」、「○○ちゃんと手をつないで嬉しかった」、「にらめっこしたときのみんなの顔がおもしろかった」・・・などなど、子どもの喜びにきりはない。喜びに着目して仲間と共に生活し、喜びの数だけ拾い集めた小枝を挿しては「喜びの木」をつくる。どんどん大きくなっていく。どれほどの大きさになるのか、どんな装飾が施され、どんなふうに飾られるのかわからない。わからないがそのプロセスの渦中にいるだけで幸せな気分になる。
保育士や栄養士等は、そんな子どもたちの様子や過去の子どもの活動・体験から、その溌剌とした姿、飛び切りの笑顔を思い浮かべながら、子どもが創り出す「喜びの木」のごとく、子どもの楽しんだこと、好きなものに保育者自身の喜びを乗せて、保育環境を構成し、献立を作成して行く。
「黒はなぁ、いろんな色が混ざり合ってできてるんやで。だから、僕、影絵の中にいろんな色が見えるねん」、保育園時代に聞いた染めのおっちゃんの言葉を今に紡ぐ卒園児さんの言葉である。
明と暗、長と短、多と小・・・。存在の一つ一つに光と影、影の中に多様性を見ている。こんなふうに見ると黒も光と影のコントラストも一層美しい。どんな在りようも肯定するやさしさの黒である。日々の生活を支えるさまざまな人の光と影。保育の師走を温かく彩って行くプロセスに頭を垂れる。