『 環境を通して行う保育 』のお話 

『 環境を通して行う保育 』のお話 

理事長 すぎもと かずひさ

乳幼児教育・保育の方法論は「環境を通して行う保育」であると保育所保育指針・幼稚園教育要領・認定こども園教育保育要領に明記されている。小中学生の授業イメージにある着席して行われる、先生から生徒へ教授するスタイルではない。では、子どもはどのように学びを深めていくのであろうか。

まずは、個人差の著しい子ども一人一人の個性を最大限に尊重し、ありのままに受け容れ、認め、愛するところから出発する。俊敏な子、おっとりした子、外向的な子、内向的な子、子どもは実にさまざまである。子どもはみんな生きている証として、小さいけれど、意思を持ち、願いを持ち、能動的に行動し、大きくなっていく。子育ての原点は、子どもを大人の思い通りにするのではなく、子どもの「能動性」を育み、子どもの「やってみたい」、「やりたい」気持ちを愛し、生かしきろうとするところから始まる。

さて、子どもは身近な身の回りの「もの=物的環境」や「ひと=人的環境」に興味や関心を持ち、関わっていく。身にまとい、あるいは大人や身近な人がまとっている衣服や使われている生活道具・雑貨であったり、住居を成す建材や家そのものが対象であったりする。当初、使い方を知らない子どもは自由に関わるが、やがて大人の行動を見て、それぞれに衣食住などの目的のあることを知り、模倣や手伝いを重ねているうちに使い方を覚え、生活習慣を身につけていく。これらは生活を柱とする教育・保育内容といえる。

今一つは、自然やアートを源流とする教育・保育内容である。戸外へ一歩出ると子どもは石や土、草木に触れ、光や風や水を遊ぶ。まるで自然と共鳴するように遊ぶ姿は能動をはるかに超えている。感嘆で始まる行動の数々は、拾う、集める、分ける、交換する、飾る、つくる、加工するなど枚挙にいとまがない。これらが、室内に持ち込まれ「遊ぶ子ども」ならではの味わいを生活にもたらしていく。それらの一つ一つに数や技術、科学、言葉、表現等々、どれほどの学びの契機や要素が秘められていることか。

「環境を通して行う保育」とは、子ども自らが環境に関わり、その相互作用の中で生まれる現象の中で価値や意味を育み、さらに興味や関心を深めながら、愉しさや面白さ、あるいは感動を引き連れ学びを深めていくスタイルといえる。「○○ちゃんの拾った団栗」、「○○ちゃんがつくった鞄」が主人公として光放つ保育である。

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