『 元気の自己内他者の夢 』のお話
理事長 すぎもと かずひさ
桜のつぼみがまあるく膨らんで蜂のお尻のようである。赤ちゃんのお尻も、子どものほっぺも、なかよしの心もみなまあるい。まあるい出会いが膨らんで新年度の始まりだ。
楽しい園生活を予感させるような保育者でありたい。泣き顔をそっと抱きしめ、わがままに拍手を送る。子どものやりたいこと、好きなこと、好奇心に胸を躍らせ小さな夢を少しずつ、一つずつ叶えてゆく。一人一人の子どもの存在が有り難い。共の歩みが嬉しい。面白いこと、愉しいこと、美味しいことをどんどんプレゼントして、大いに笑い合う一年にしたい。
桜のつぼみが開くように、可愛い手が開いてゆく。手の行き先に瞳が動く。自然に身体がついてゆく。楽しみのうちに身も心もぐんぐんのびのびとなってゆく。
部屋を凸凹にする。いろいろな仕掛けをつくる。遊ぶ子どもが形を変える、色を塗る。形あるものをイメージし、描けるようになった子は所狭しと描きまくる。壁や隙間や天井をいくつもつくっては出たり入ったり空間の変化を楽しみ、風呂や寝室などと場所に命名したり、意味や役割を持たせてゆく。子ども語りの物語は尽きることを知らない創造の泉である。
入園・進級式が終わると庭に土を入れる。途端に土に戯れ、感触を満喫する子どもたち。やがて穴を掘り、掘った土で山をつくる。土山づくりは友達づくりでもある。板やコンテナなどが子どもの発想で組み合わされて食卓になる。食卓の上には土でできたご馳走が並ぶ。リヤカーが乗り入れられては土を運んでゆく。土と一緒に荷台で揺られる子と二人三人と力を合わせて引く子、押す子・・・。子どもの数だけ遊びエネルギーがこだまする。
乳幼児期は「心のふるさとづくり」の時期である。振り返ると家族や友達、身近な人の笑顔や楽しい思い出がいっぱいある。「齢を重ねると立ち上がるたびにどっこいしょと口にするようになってくる。身体の調子の思わしくない時も増えてくる。そのとき幼い時に聞いた父母や祖父母など自分に愛情を注いでくれた人たちの声が応援してくれる。その思い出がいくつになっても元気の源になっている。それが子ども時代に育まれた自己内他者の存在です。」とは「幼児期」の著者である岡本夏木先生の晩年の言葉である。
そんな存在になることを夢見る私達。どんな表情を、仕草を見せてくれるかな。どんな願いや言動を与えてくれるだろう。花びらのような唇が未来を彩る、まあるい春。