『 永遠の童心に拍手 』のお話

『 永遠の童心に拍手 』のお話

理事長 すぎもと かずひさ

大豆の収穫に行ったら鞘にない。「えーっ!」。「驚き」と「ショック」、育ててきた大豆への愛着が「喪失感」に拍車をかける。ただならぬ雰囲気の子どもたちである。一人、二人、三人と急いで探し回る。「探し物は何ですか~♫」、のんきな雰囲気はみじんもない。「あったー!」、「おったー!」見つけた愛おしさからか、「だいずん」という名前が与えられる。「味噌づくり」の材料として園に持ち帰る心持ちのどんなに嬉しいことか。

 枝は散歩の友である。「剣」や「釣り竿」、まさに万能、文字通り「魔法の杖」にもなる。さらに、ぽきんと折ることで絵筆として大活躍する。ぽきんと折れるたびに遊び回る。室内飾りやままごとの素材になる。「小枝」を「自由の象徴」として捉える子どもの感性が駆け回る。小枝の名前は「もっくりん」。保育室はそんな彼らと子どもの足跡でいっぱいである。

藍染料のもととなる「すくもづくり」では、自ら育て、収穫した藍の葉を発酵させる。90ℓのポリバケツに5㎏の乾燥葉を入れる。落し蓋のようにタオルを敷いて上蓋を締める。秤、棒温度計、砂時計、グラフ、色鉛筆は必需品。毎日一定時間に観察と記録を繰り返す。発酵すると熱が出る。ふたを開けた途端、「汗かいてはる~」、「納豆みたい~」、「お酒みたい~」、「発酵」と子どもの出合うところ「すっちゃん」はすくすく育てられた。

綿の葉に虫がいる。葉巻虫である。「どこからきたん?」「なんできたん?」、葉巻虫は答えない。答えないから空想が始まる。葉をくるくる巻いて服のようである。筒状になった葉の両端の穴から時々覗いているという。「なんで覗いているのかな?」、「なにを見てるのかな?」、好奇心は止まらない。「わかった!綿を見てるんとちゃう!」、こうして綿の番人「わたまる」となった。

子どもとの一年を振り返る。「どの場面を表現遊びのテーマにするか」鮮烈な体験を写真やエピソードをもとに、改めて子どもたちに紹介する。ミーティングもまた鮮烈である。小さな瞳をくるくるさせて顔を見合わせる。のけぞるように自らの体験と空想を束ねてゆく。「童心のつどい(表現遊び発表会)」の内容は子どもの生活体験とその時々の思い付きやひらめき、仲間との共同によって昇華されてゆくプロセスである。

担任が語る。子どもを語る、保育を語るうちに涙があふれてくる。その向こう、生き生きとした子どもの姿が見える。永遠の童心に拍手。

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