「本気の夏がやってきた!!」のお話
理事長 すぎもと かずひさ
水たまりが呼んでいる。きらめく水面の向こうに躍動の未来がある。築山のてっぺんから飛び込む寸前の顔はもう弾けている。「バッシャーン!」、元気の塊と泥水が一緒に周りへ撥ねてゆく。一人一人の自由な振る舞いが顔や身体に飛び散って服と心を染めてゆく。
「お風呂~」と言えば風呂になる。築山の斜面に座り、足湯さながらに水たまりをジャブジャブする。並んですると楽しい。足の動きと水の動きと心持ち。揺れに揺れて音が鳴る。楽しさで勢い早くなる、激しくなる、笑いになる。「わたしの世界」と「友達の世界」が子どもの数だけ入り混じって人数分以上の「現在」が現れつづける面白さだ。
海といえば海になる。川との違いはときにない。メダカもタコも一緒に遊ぶ。無関心な隣人がいれば眼の前でニョロニョロする。タコの求愛活動だ。隣人はあっという間に手に落ちる。否、タコだけに「足に落ちる?」、これが本当の「八本美人?」。メダカは何処へ、友達もイメージも吸い付けて「バシャバシャバシャ・・・」千手観音仕様の手足が大活躍だ。
誰の顔も泥に汚れている。こんなはずじゃなかった。いつの間にか付いた。夢中の仕業だ。「一人の夢中が二人の夢中、二人の夢中が三人の夢中、四人、五人、六人~忍法、影分身~!!」
プールである。陽気が味方して水温や水の感触が心地よくなってくると自然に手が伸び、足が伸びて水に親しんでゆく。無理強いはしない。水の苦手な子どもにとって予期せぬ水しぶきや波動は緊張を生み、プール遊びのねらいの一つである「ダイナミックかつのびやかな動き」を遠ざける。顔の表情や心身の様子に応じて徐々に親しんでゆく。
それでも夏の終わるころには「見て!見て!」と顔を付け、飛び込み、伏し浮き、両手両足を回し、まさに「自由形」、何泳ぎであるか判別不能なオリジナル泳ぎの数々を見せてくれるのである。「見て!見て!」こそは、子どもが自らの成長を実感し、身近な人にその喜びを分かち合ってほしいという証である。広げゆく新たな世界が愛おしい。
カンカン照りのお日様にみんなの影が踊っている。一人では踏み入れることがなかった「子どもの世界」である。子どもと子どもを結び、元気と元気を掛け合わせ、イメージとイメージを繋ぎ、様々な風景と現象を紡ぎゆく「土」と「水」。本気の夏がやってきた。
※家庭で、戸外で、水の事故には十分ご留意ください。
※「汚れものは遊びの勲章」とは言いますが、洗濯等の手間は父・母・きょうだい等で分担しましょう。