「自由が半端ない子どもたち」のお話

「自由が半端ない子どもたち」のお話

理事長  すぎもと かずひさ

園庭を眺める。スコップにフルイ、プリンやヨーグルト等のリサイクル容器、鍋、フライパン、コンテナ等が、様々に関わられ、目的を持たされて、「遊びの市」が大繁盛である。

自分の身体より大きなタイヤを転がしては積み重ねていく年長児さんは、五右衛門風呂さながらに跨いで身を沈め、悠然と景色を楽しんでいる。ところが、首の塩梅が今一つなのか、さっと飛び出し、あっという間に50㎝四方くらいのウレタンマットを見つけてきた。早速、丸めてタイヤ上部から半分ほど突っ込んだ。いざ、再入浴。マットを背にもたれてみる。「こりゃいい~」、エリマキトカゲ風五右衛門風呂の完成にご満悦である。

そんな友の様子に誘われて隣では新たな五右衛門風呂の設置が急ピッチで始まっている。タイヤが積み上がる早さに並々ならない思いが伝わってくる。しかも、ウレタンマットはタイヤの下に1枚、首の後ろに1枚、さらに手に1枚の3枚仕様である。やはり後発隊、クオリティをあげてきた。雨や外敵から身を隠せるように手に持った1枚が屋根になる寸法だ。頭までタイヤに潜り、蓋のように開け閉めしては、明と暗を楽しんでいる。隙間から辺りを窺い、知った顔が現れると「わーっ!」と、隠れる喜びを見せびらかしている。それを見た最初の彼もじっとしてはいられない。急いで新たな部材探しに出かけてゆく。かくして、スペシャル五右衛門風呂づくりの知恵比べがつづく。

その横では、ままごと遊びを楽しんでいる3歳児さん。ご飯を入れていたステンレス製のボールを持って、どこかへ差し入れにでも行くのかと思いきや、いきなりボールをひっくり返して被った。あれ~、イメージチェンジどころじゃない。ところが、この突然の行為が垂涎のヘルメット・ファッションを生んだ。彼の姿にキョロキョロしだした友の視線は、俄然、まあるく光る物体に向けられる。柳の下の泥鰌を狙う眼だ。しかし、無い。無いから探す。とにかく被る、被ってみる。匹敵する被り物を見つけまショー・タイムである。

ここで、まさかの三角コーンが脚光を浴びる。重さも視界も関係ない。マリー・アントワネットもびっくりの頭の高さである。一人、二人、三人と愉し気で可愛い行列ができてくる。ピョンピョンと森の小人さんと見紛う不思議な世界が現れる。

使い道を知らない自由、見た目を持たない自由が子どもの半端ない行動を生みつづける。目的最優先で自由にものと関わる感覚。遊びの創造世界、子どもの楽園の原点である。

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