『 子ども座のクリスマス 』のお話
理事長 すぎもと かずひさ
冬の日暮れは切ない。夜が昼を食べて待ち受けている。明暗が闇を一層暗くする。そんな夜に灯りをともす。灯りは自らを照らし、近くを照らす。身近な存在のかけがえのなさ、ありがたみがじんわり湧いてくる。ものの豊かな時代だからこそ心を照らし合い、感謝と祝福のうちに一年を締めくくろう、そんな園の12月である。
スタッフが柿の枝をいただいてきた。クリスマスツリーにするのだ。柿の木の枝のように紆余曲折があってもやがて実を結び、熟しては輝く大きな種をもたらしますように、という願いと、柿は日本原産の果物といわれ、16世紀頃にポルトガル人によってヨーロッパに渡り、その後アメリカ大陸に広まり、今では「KAKI」は世界中の人に愛され、学名も「ディオスピロス・カキ(Diospyros=神様の食物 Kaki)」、「KAKI」の名で世界中に通用するといったワールドワイドな由来を反映している。
子どもは、この枝に遊びの産物を結んでいく。サンタクロースの好きそうな食べ物や世界中の子ども達にプレゼントして回るための乗り物、サンタクロースの家族が暮らす家、調度品等々、プレゼントを待ちわびている証しにどんどん作っていく。作るほどに待ちわびる。ごっこ遊びの無限のイメージが夢現の世界を醸し出す。
カーテンを閉めた暗がりの中、子どもらが車座に座っている。真ん中には自分たちが作った遊びの産物が置かれている。AくんのものからZちゃんのものまで、一人一人の可愛い手から産み出された作品があちらこちらを向いて佇んでいる。担任が唇に人差し指を立てて子どもらを見渡した。無言になる楽しさが広がっていく。静けさが立ち込めた瞬間、マッチを擦った。「シュッ」、音と煙硝の匂い、ほのかな煙を連れて揺らめきながら火がキャンドルに近づいていく。「子ども座」とでも呼びたくなるような車座の真ん中でキャンドルが照らす一人一人の作品にみんなの顔。
このかけがえのなさはどうだろう。子どもらがひねったなりの紙粘土、力を合わせて絡みつかせた枝に蔓。静けさの中に子どもらの経験の残影が充満し、共感のステージで踊り出す。そんな「場」である。
こころとこころがふれあうとき、こころの形が影響し合う。さっきまで尖っていたりひしゃげていたりしていたこころがまあるい方へ動き出す。いつしかこころの温度までぬくもりの方へあたたまっていく。そんなこころとこころのふれあう「子ども座のクリスマス」。