『 「生命の灯り」のお話 』のお話

『「生命の灯り」のお話』のお話

理事長 すぎもと かずひさ

クリスマス会のキャンドルサービスの出番を待つ年長児さんたちが会場の外で沈黙を保っている。会場の入り口付近では保育者がろうそくの火を子どものろうそくへ移そうとしゃがんで待っている。そして、点灯。その瞬間、息をのむ子どもの呼吸が止まる。薄暗がりのホールに一つ二つとろうそくの火が灯りゆく。あらためて一歩。歩みの振動とふたたびの息づかいに灯が揺らぐ。

生命の根拠の灯りである。固唾を飲んで見守る年少の子どもたち。その顔々を照らし出しながら灯りの列は、前方の舞台へ進んでゆく。かざす灯の向こうにどんな景色が広がっていることだろう。灯りはこんなにも尊いものであった。順番に並んでゆく子どもたち。彼らの前に正座して、一人一人の姿をじっと眺めた。自分の場所を見極めては次々にこちらへ向き直る。その面持ちの美しさ、あまりの神々しさに涙が溢れてくる。澄み切った精神が立ち込めて素晴らしい静寂であった。

ものを見る、あるいは、ものが見えるには、灯りがいる。その大切さを味わい、感覚を研ぎ澄ましていく光と影の遊びの盛り上がりがあった。灯りを点けたライトテーブルの上に、水を入れたワイングラスを置き、さまざまな色の食紅を一滴ずつスポイトで垂らしてゆく。着水の波紋はほのかに色を伝え、滴の本体は一滴ごとに色の道をつくりながらゆっくり揺らめき沈んでゆく。その様子と同期するように笑みを浮かべる子どもたち。友達の滴、自分の滴、グラスの上下左右、いろいろな方向から、各々の仕方で見とれている。自分たちの行為と世界の出会いの連続から産み出される微妙な色の変化に自身が見とれる遊びの体験は子どもたち自身が自分に贈るプレゼントである。

サンタクロースさんへも思いやりいっぱいのプレゼントを贈った。どんな天気のなかでも来てくれるサンタさんへ汚れても大丈夫なように着替えの服や靴をつくった。帰り道を心配してソリをつくった。ツリーにはサンタさんが喜ぶような食べ物やおもちゃや家具などをつくった。イメージを楽しんでは色を塗り、思い思いのものを描きつくった。その一つ一つの作品が灯りに照らし出されて影を遊んだ。これもまた世界にたった一つの影である。園庭で、室内で灯りのあるところに影があった。身体を映した、手指を映した。自らの存在と自らの作品に囲まれて光と影の物語は幾重にも広がっていく。かけがえのない世界とともに現れてくる生命の灯り。