「行きたい、生きたい園をつくろう」のお話

「行きたい、生きたい園をつくろう」のお話

理事長 すぎもと かずひさ

行きたい場所には、居心地の良さがある。そんな園でありつづけたいと思う。一人一人の呼吸やリズムと一心同体となって、抱っこしたり、寝転んだり、走ったり、踊ったり、ぼんやりしたりなど、各々の子どもの、その時々の欲求や要求、一挙一動を慈しみ、そんな保育者等の気持ちが以心伝心して子どもの純心が、無邪気が、みんなの気が、あどけない笑顔とともに駆け巡っていく場所。

思い思いの好奇心が出会う場所には、感動が集まってくる。誰かが見つけたアリさんにたくさんの子どもの視線が注がれて、アリさんの動きに合わせて声を出す。「あっ!あっ!」、「わーっ!」感嘆の合唱が園のそこかしこでこだまする。子どもたちを中心に広がっていく真剣な面持ちと全身を震わせながらの身振り手振りや指さしは、世界中のどこでも誰にでも通じる飛び切りの仕方である。

こんなふうに一人の感動が5人、10人と広がり、誰のもとからでも混ざり、交わり、遊脈混交が真っ盛りの園。一人一人の興味や行為、ものへのかかわり方の違いが見事に生かされて、子どもと子どもの間で楽しいこと面白いことが付いては離れ、化合し、拡散していく。虫の生態の気づきを交換したり、花やちぎった葉の匂いを共感したり、それぞれに広い集めた石を大事に飾ったり、一人一人の違いがあるからこその表現から、ならではのモノゴトが生まれ、新たな世界が現れてくる。

童心はいつでもどこでも行動範囲が狭い分の緻密さで興味の対象を発見し、「いま・ここ」の場に奥行きをもたらしていく。夢中という名のタイムマシンを縦横無尽に操り、時間を忘却の彼方に追いやっては時間の隙間へ潜り込んでいく。大人の眼からすればほんの小さなことも、感動体験に変えていく。このような時間の過ごし方や世界の味わい方ができるのが乳幼児期の特徴である。

誰もがかけがえのない存在として、この世に生を授かった。素晴らしい特性を持つ一人一人の子どもたちの誰もが、自分の仕方で人生の主人公となって自らに由って面白いことを見つけ、つくり出していくようにすることが乳幼児教育・保育に携わるものの使命である。喜怒哀楽の自由があり、どんなときも愛され、受け容れられ、その愛情をこころの基地にして、あたたかな雰囲気が子どもと大人、誰のもとからも湧き出ているような場所。喜びと充実の体験の記憶を育んでいく場所。みんなの気を集めて、一緒に生きたい園をつくろう。