『 永遠へとつながる生命の秋 』 のお話 

『 永遠へとつながる生命の秋 』 のお話 

理事長 すぎもと かずひさ

「今日の子どもたち」で紹介される写真は、生命の大河を流れるほんの一握りの場面にすぎない。本来は、すべての子どもの姿や保育の営みを余すところなく保護者のみなさんにお伝えしたい一心である。朝目覚めたときには予想もしなかった虫や植物、仲間との無数の出会いがもたらす子どもの感動、驚嘆。それに端を発した行為の数々がどれほどの価値を持っているかなどなど、瑞々しい体験の数々とその成り立ちについて子どもを真ん中に分かち合うことが一人一人の子どもの成育環境を豊かに彩っていく確信に近い思いがある。

象徴的なのは「環境愛」である。子どもたちの好奇心の旺盛は自明のように思えるが、よくよく見ていると、子ども自らが好奇心を発揮する出会いばかりではないことが分かってくる。風や光に身を包まれて何ともいえない心地よさを味わった体験は誰しもあるだろう。朝陽に勇気づけられたり、夕陽に一日の感謝と祈りを捧げたり、太古の昔から人間は自然と共に生きてきた。それは「すべてのものを生きているものとして感受する」子どもたちのミクロな世界において一層活発になる。

「美味しいご飯にして」と小石が子どもたちに語りかける。応えるように土をてんこ盛りにしたトレイの縁に埋め込むように小石を飾っていく。小石に生命が宿る。ふと辺りを見回すと地面に花弁が転げている。先に仲間が動いた。花が語り、それを了解した子どもたちが以心伝心つながり合っていく。花びらを湛えた一輪は飛び切りのご馳走だ。先ほどの小石の上に花びらが生かされていく。

こんなふうに周りの環境たちのはたらきかけと呼応しながら「吸い込まれては夢中の体験」が繰り返されて、生まれ広がっていく子どもの世界。無限とも思える相互作用が各所で同時に起こり広がっていくとき、生命は一人のものなどではなく、ましてや人間のものだけでもない生命の合唱が大河のごとく現れてくる。生命の境界を一瞬で消し去る虫の声や花の美しさは、子どもごころをどれほど虜にしてきたことだろう。都度、虫や植物に生命の深さを教えられ、それらを全体的に育む太陽や空気、土、水などの地球環境のかけがえのなさを瞬間に覚らせてくれる世界観である。

園庭を散策する幼子のときめき、子どもの純粋がつぎつぎに遊びに広がっていく様子は人間の初心を教えてくれる。生命の大河に清らかな流れをつくる。アニミスティックからホリスティックへ。子どもの手が、思いが「永遠」へとつながる生命を宿らせていく、秋。