「 みんなぽっちのこりびん“Co-Living”の願い 」のお話

「 みんなぽっちのこりびん“Co-Living”の願い 」のお話

理事長 すぎもと かずひさ

「みんなぽっちのこりびん“Co-Living”」がどんどん成長して園中を賑わしている。こどもたちは「自分自身」、「身体のなか」、「身のまわりのもの」、「自然をはじめとする環境」、「遊びでつくりゆくものたち」に「こりびん」を投影・浸透させては、文字通り“Co-Living”の存在ならびに世界を広げてゆく。一人一人の好き好きや思い思いが、現在・未来を拓きゆく姿は、「安全」に加味した、もう一つの「生命を大切にすること」という保育の理念にほかならない。

先日、20数年前に卒園した男性が、お連れ合いと二人のこどもさんといっしょに園へやってきた。やんちゃ盛りだったころの思い出話に花を咲かせた帰り際に、保育室や園庭が見たいというので、スタッフが案内した。久しぶりに足を踏み入れた「こどもアトリエ」さながらの保育室に広がるこどもたちの遊びの姿跡を目の当たりにして、当時のことが一層蘇ってきたのだろう、興奮気味の彼である。お連れ合いの彼女も「こんな保育室見たことない!」とすっかり驚かれた様子であった。ご自分のこどもさんの育ちや自分の子育てについて、あれこれ心配し、悩んでおられるという彼女であったが「この部屋見たらわかるやろう。人と人を比較するということがどれほどつまらないことかということを、僕はこの園で学んだんや。ほんまに毎日が面白かってん。」とさらりと言ってのける彼の言葉に納得しきりの様子であった。幼児期の体験がいまもなお生命を灯しつづけていることを証明するありがたいエピソードである。

さて、京都は保育の第三者評価の先進地だ。最大の理由は「ポジティブ・アシストの精神」にある。評価を受ける「受審」という言葉を「受診」と置き換えて18年、そのこころは「愛ある評価」にしたいという思いであった。評価を受ける側も恐れなく「受けて良かった」と感じてもらえる評価こそが真に質の向上に寄与する。評価・調査者養成研修では、講師の誰もがその大切さを説いた。日常を共に生きることが適わないものが課題を指摘するという仕組みであるからこそ、課題が生起した理由や状況の理解に寄り添うように話を聞き、評価に臨むことが肝要である。その過程で交わしゆく温かな感情交流ゆえに本音トークが現れ、紙面を超えたコミュニケーションが結ばれてゆく。

裁き心のない関係が無構えで生き生きとしたコミュニケーションの根本である。これは、こどもを取り巻く、保護者さんと保育者の関係も同様であろう。「生きているものどうし」のつながりのなかに「こりびん“Co-Living”」は生きている。「生きているものどうしの想像力」が編みゆく一瞬一瞬に、あたたかに見る感情が流れてゆきますように。「生命を大切にすること」という理念のさながらに。