「夢 面白いみんなのき」のお話
理事長 すぎもと かずひさ
生きることはつくること。変化しつづける自然に、世界に生かされて、存分にかかわり自ずから変化していく。一人一人の子どもが自らに由って生を謳歌し、子ども時代を満喫する。そんな子どもと大人の保育を「いっしょに なが~く つくっていきたい」と巳年にあやかり夢を見る。
好奇心は子どもの夢の源だ。「いつでも夢~を~」とデュエットするように、いつでも、どこでも湧いてくる。欲求の粒が渦巻いてみんなの元気が成長していく。いい気が廻りはじめる。それぞれに魂の粒を迸らせながら「あっちゃこっちゃうじちゃ~」と動き回る子どもたち。子どもの気の一粒一粒をダイビングキャッチしたり(お~!ファインプレ~!!)、拾い集めたりして、子ども魂を分かち合う。共感の粒が保育者のこころのうちで花ひらき、全身へ、行為へ、コミュニケーションへ、保育環境へと伝播していく。
子どものやりたい、やってみたい、挑戦したいことへ寄り添い、応援できる喜び。子どもの柔らかで境界のない純心とひびきあい、まざりあう感動。子どもとともに世界をつくり、広げ、重ねていく保育の物語は「官能=感応」の保育の過程となって保育の日常に立ち現れてくる。
園の玄関で3歳児さんの女児二人が顔を見合わせて笑っている。通りすがりに眺めると入り口に脱いである大人用のスニーカーを指さしては含み笑いを耐えきれず楽しげな声を漏らしている。すっかり惹き込まれて「この靴がおもしろいのん?」と尋ねると「だってな、おうちでな、お母さんとか、お父さんとかの靴履いてんもん・・・」と、明らかにその嬉し楽しい様子を思い浮かべながら破顔の君で笑いくずれる二人である。
「お母さんの、お父さんの大きな靴を履きたい」という子どもの夢。ぶかぶかの靴に小さな足を入れるというよりは下ろし、有り余る隙間で泳ぐ足を靴底に密着させながらときに滑らせ、靴の甲へ全重心をかけて引きずるように歩く感触。憧れはあの歩きづらささえ夢にする。大人用スニーカーを眼の前に同じ夢体験のある二人はその思い出を蘇らせながら履こうか履くまいか過去の記憶と未来への想像力をまぜあわせ「うずうず」楽しんでいたに違いない。
子どもは、山あり谷ありといった変化に富んだ環境が大好きだ。起伏を越えるたびに夢の実現に向かう期待の高まり。多様なこころの運動、その質と量がこころの栄養になっていく。
童心の神の誕生に面を照らされて、実に「面白いみんなのき」。