『デジタル時代の子育ち・親育ち・保育者育ちと夏の思い出』 のお話

『デジタル時代の子育ち・親育ち・保育者育ちと夏の思い出』 のお話

理事長 すぎもと かずひさ

先日、主催する研修会で「いま社会に発信しつづけていきたい親性脳、感性脳の育ちと保育の意義」と題して、京都大学大学院教育学研究科の田中友香理氏にご講演を賜った。

氏は全国私立保育連盟の理事としてお世話いただいている明和政子先生(明和研究室https://myowa.educ.kyoto-u.ac.jp、2022年2月号コロナ禍での園だより「身体接触はなぜ大切か、愛着形成と新しい生活様式」で紹介)の研究グループの一員として、またご家庭においては小学生と保育園児の母親としてご活躍で、お話には双方の当事者ならではの研究に対する真摯な姿と情熱が参加者の胸を打った。

氏の研究の素晴らしさは、2050年に向けた社会課題の解決に焦点をあて、「子ども」「親」「保育者(養育者)」のそれぞれを研究対象にされている点である。デジタル環境、ヴァーチャルな環境がますます人の生活環境へ深化しつづける現代社会において、いかに子どもの脳発達における「感受性期」をはじめとする生育・成育環境を護りゆくかは人類共通のテーマである。

ここでは一例としてお話のなかで取り上げられた2023年に東北大学が発表した「スクリーンタイムの長さと幼児期の社会性・認知発達との関連」のデータを参照する。

1歳の時にスクリーンタイムが1日1時間未満だった子どもと比較すると、スクリーンタイムが4時間以上の子どもでは2歳の時と4歳の時にコミュニケーション領域の発達に遅れがある割合がそれぞれ4.78倍と2.68倍に。また、問題解決の領域でも2歳では2.67倍、4歳では1.91倍の割合で発達の遅延がみられたのことであった。

このように、1歳児以降(0歳児はもちろんのこと)の子どものスマホやテレビの動画視聴、その他のデジタル端末の視聴時間が1時間を超えると顕在化する発達リスクを親や保育者(養育者)は知ったうえで、子どもの日常生活ならびに保育のあり方を模索し、共創していく必要がある。氏をはじめ、世界中の多くの研究者がさまざまな角度から、このようなリスクを可視化して、支援する手法を開発し、社会実装することを目指されていることの尊さを思う。

わたしたちは実践者である。コロナ禍においては明和先生からマスクが親や保育者の表情を覆うことによる子どもの社会性発達のリスクについて学ばせていただいた。

スマホを構えるそのときに可愛い我が子の視線の先に大好きなお母さんの、お父さんの表情がよく見えているだろうか。子どもの感動とシャッターチャンスに歓ぶ写し手の表情がひびきあっているだろうか。そんなこんなを極めていく細やかなセンスを磨きあいながら子どもたちとともに素敵な夏の思い出をつくっていきたい。

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