「ウェルビーイングを高めていく素敵な時間」のお話
理事長 すぎもと かずひさ
「時計に合わせる」のではなく、「生命に合わせる」時間とは何か?「今この瞬間」に感応する保育者のあり方とは? タイムスケジュールとは、何を守るための道具であり、何を制限してしまうのか?「待つ」時間を確保することの意味とは?
この世に芽を出したばかりの子どもたちが「生きている根拠としての主体」を「生き生き」と発揮しつづけるために、みなさんと一緒に、保育や子育てを「制御」から「共鳴」へ、「時間の管理者」から「時間の感受者」へと視点を変えていきたいと思います。下表を参照しながら、「生命を尊重し、関係を育む時間」の大切さをさまざまに味わいつつ、子どもとともにウェルビーイングを高めていく素敵な時間を分かち合えたなら最高ですね。
| 時間の要素 | 説明 | 実践への示唆 |
| ① 時計的時間 (クロノス) | 時刻・分単位で刻まれる客観的時間。デイリープログラムや保育時間の管理に活用される。 | 管理や運営には不可欠だが、柔軟に扱う余白も必要。子どもの「今」を尊重するためには、絶対視しない工夫が求められる。 |
| ② 体感的時間 (カイロス) | 主観的に感じられる時間の流れ。楽しい時は早く、つらい時は遅く感じる。 | 遊びの「没入」や「集中」が生まれる時間。保育者が“今この瞬間”に寄り添う感性が問われる。 |
| ③ 生理的時間 | 子どもの発達リズム、眠気、空腹感などに根ざした身体的時間。 | 活動のテンポやタイミングを子どもの身体感覚に合わせることが、安心や信頼の基盤になる。 |
| ④ 関係的時間 | 他者との関係のなかで生成される時間。待つ・応答する・共有する。 | 「待つ」ことの大切さや、対話・共鳴が生まれる時間を尊重する。ケアとしての時間観。 |
| ⑤ 成熟の時間 (発達の時間) | 子どもがそれぞれのペースで育っていく時間。 | 比較ではなく個別の歩みを捉える。発達観・評価観の再構築へ。 |
| ⑥ 生成の時間 (遊びの時間) | 遊びのなかで出来事が立ち上がり、世界が変化していく時間。 | 予定を超えるような遊びの流れに身を委ねる。時間割に収まりきらない価値がある。 |
| ⑦ 歴史的時間 | 保育の営みが継承されてきた過去と、未来をつなぐ時間。 | 実践記録の意義、語りの継承、保育者の育ちの時間にもつながる。 |
| ⑧ 存在の時間 | 生と死、存在そのものの有限性に支えられる時間。 | 日々の「今」をどう生きるか。生命を大切にするとは「今ここ」に真摯であること。 |
| ⑨ 無時間(時間がないという体験) | 忙しさのなかで流され、主体的に感じることができない時間。 | 保育者自身の余白を確保し、内的時間を回復する仕組みが必要。 |