『 プラネタリウムの姿跡 』のお話
理事長 すぎもと かずひさ
「子どもの姿跡めぐり」は朝一番の楽しみだ。時間がないときは、保育者が保育実践の感動を撮りためたNice Shotフォルダを開く。「なんじゃ、こりゃ!?」が飛び込んでくる。「姿跡」とは、子どもたちが生き生きと遊び暮らした「いのちの痕跡」のこと。幼少期からの体験や保育史と重ね照らし、その由来・由縁を想像するのがたまらない。子どもの真実にふれ、無邪気や夢中とであい、保育者の感動と子どもへの感応のプロセスにとびきりの共鳴・共命がとまらない。
さて、年長さんの部屋である。遊び込みの連続から散らかし込まれた壁沿いの一角に奇妙な建物があった。縦横2mほどの大型段ボールがある。その正方形の一面を対角線に沿って半分に切ると三角柱が二つできる。その一つの等面を壁と床に、底面を屋根に設えた大きな斜面がこっちを向いている。屋根のてっぺんからは茜色の布がテントのようにかけられ「藁葺き屋根」ならぬ「布葺き屋根」の風情である。
歩みを進めると右側面に入室を促す暗がりがのぞいている。自立強度を増すための工夫か側面の端50cmほどが内に向かって直角に折り曲げてある。それがちょうどいい感じの壁面となって視認性の高い中央に看板らしきものが掲げてある。黄色絵の具の太筆書き。思いのこもった自由な筆遣い。赤・青など、いくつの色を混ぜたのだろう。オレンジや黄緑のグラデーションが素敵なアクセントを醸している。う~ん、すぐには読めない。わからない故の面白さ。わからないから、つぶさに眺める。しげしげと、思考と眼を凝らす。魅力とはなんだ。惹きつけられている。
「ぷらねたりうむ」であった。だから暗い。仰向けになる。頭から入館。「うわ~!!」、思わず声が出た。だから、茜色。意図的に開けられた天井の隙間から光がさし込み、天を覆う茜色の布を透して夕焼けと見紛うトップライトが演出されている。あちこちにかたどって貼られたセロファンやテープ、ラップなどの反射する素材たち。色鮮やかな絵の具で描かれた太陽、雲、青空、なぜかお花たちも、子どもたちにとっては大切な「星に願いを」の宇宙の仲間たちである。
腹ばいになって館内をめぐる。つくりかけの素材が賑わっている。すべて夢の途中、どんな方へも凸凹、ジグザグ語りゆき放題の未来が広がっている。暗がりの片隅。転がるヨーグルトカップ。手に取ると中に黄・オレンジ・青のセロファンと飴やお菓子を包んでいたと思しき透明な袋が散りばめてある。乳児期からの星の軌跡やプラネタリウム。そのときどきの「きれい」「たのしい」「ふしぎ」が、こんなかたちの姿跡となって、いまここに息づいている。実に美しき星物語。