『 この素晴らしき世界を発見しゆく こどもたち 』のお話

『 この素晴らしき世界を発見しゆく こどもたち 』のお話

理事長 すぎもと かずひさ

「この素晴らしき世界(What a Wonderful World.)」というグラミー賞の殿堂入りを果たしたルイ・アームストロングの名曲がある。晩年、心臓病を患った彼が万感の思いで歌いつづけた曲であり、CMソングとしてもつかわれたりしたのでご存知の方も多いことだろう。歌詞はこう綴っている。

緑の木々が見える 赤いバラの花たちも わたしと君のために咲いている

そして、しみじみと思う なんて素晴らしい世界だろうって

青い空が見える 白い雲たち 明るい祝福の日 暗く神聖な夜

そしてまた思いをかみしめる なんて素晴らしい世界だろうって

虹色の空の何て美しいこと 行き交う人びとの顔もそう

友だちどうしが握手して「ご機嫌いかが」と声を掛け合っている

彼らは心の底から「愛してる」と言っている

赤ちゃんたちの泣き声が聞こえる その成長を見守ろう

彼らはわたしより もっとたくさんのことを学ぶだろう

そして、つくづく思う なんて素晴らしい世界だろうって そう なんて素晴らしい世界だろう

こども=人間は、誕生から生命ある限り、まわりの環境とともに生きてゆく。五感などの体性感覚を働かせながら、自然や身の回りの様々なモノを感受・知覚し、心身の内なる諸感覚を連動させながら行為・体験を積み重ねては意識に取り込んでゆく。産院から初めて戸外へ出て、父母の抱っこの腕のなかで浴びた陽の光。ヨチヨチの歩みを止めて、吸い込まれるように見つめた草花、摘まみ上げてはさまざまな角度から眺めた小石や木の葉。手指の運動感覚と視覚などをたどたどしくも巧みに協調・協応させながら月食さながらの光の輪郭を遊ぶようにもなってゆく。

遊びの体験にはすべからく感情や情操がつきものである。気持ちいいこと、面白いこと、不思議なこと、きれいなことたちが目くるめく感動を連れてやってくる。外界を感受する心の働きと内なる思いを表現する心の働きと、家族や友と心を混ぜ合わせてゆく心の働きと。行為、モノゴトなどが生成されゆく際には、生活で、人生で培ってきた様々な感覚が要素となり、コラージュされてゆく。

ところで、外界の大きな要素である自然および、生活環境やまわりの人間とのかかわり・心の交流にいたるまで、その時間の過ごし方や空間の成り立ち、人権を互いに尊重し合う関係づくりの在り様が大きく影響する。その根底に、生命共同体の成員として目指しゆく理念・価値観によって、その味わい方、事物の提供のされ方、環境構成の目的や意味が大きく異なってくる。豊かな感覚は豊かな想像力を育んでゆく。「この素晴らしき世界」を発見しゆくこどもたちのこころの旅である。