『 人間愛、環境愛へつながるいのちの輝き 』
理事長 すぎもと かずひさ
「いのちを輝かせる子ども(人間)」。学校の教育目標などでよく見聞きする言葉である。「輝きに磨きをかけゆくいのち」と「輝きを潜めゆくいのち」が含意されている。ところで、どんな状況及び環境に置かれたとき「いのち」は「輝き」を変化させるのだろう。園や学校や家庭でのいずれにおいても「いのちを輝かせる子ども(人間)」になりゆくためにどんなふうにかかわり、援助し、または見守る眼力を養ってゆけばいいのだろうか。
保育を表す“Care & Education(養護と教育) ”という言葉を思い浮かべては、永遠の木霊のように、わが身わが心に響かせ、なかまとともにあたためてきた “Care”の大切さを思う。「子ども(他者)を受け容れることは理解するより難しい。子ども(他者)を受け容れようとするとき受け容れる側にも変化が起きる。その変化への不安や葛藤は抵抗をもたらすからである」。カール・ロジャーズの言葉が大勢の子どもたちの姿とともに蘇り、いまを生きゆく子どもや保育者に還元されてゆく。「人が人になること」「自分らしい自分を生きゆくこと」。その生き方の原型を育みゆく乳幼児期である。
朝は職員研修から始まる。感動の一日は子どもの姿からと乳児クラスの写真フォルダを開いた。飛び込んできたのはなんとも愛らしい乳児さんの寝姿であった。あたたかい「気」が流れる。「いっぱい遊んでぐっすり、おやすみなさい♪」というネーミングからも、子どもの生命のリズムを丁寧に育もうとしている保育者の思いの丈が伝わってくる。生命は流れている。何もかもが新奇で、好奇の対象である赤ちゃんが「いのちを輝かせ」存分に遊んだ体験からの「ぐっすり」である。地球に昼と夜があるように「いのち」には「静」と「動」の「輝き」がある。健やかな寝顔は、周りの私たちをも輝かせてくれる、ひとのためになる「いのちの輝き」だ。
先日3年目を迎えたばかりの保育者が、「人形を我が子のように抱っこしながら満足気に微笑む1歳児さんの写真」をもとに語り始めた。「このお子さんは、お人形を抱くとき、ついこの前まで縦抱きやったんです。ところが最近、横抱きにしはるようになって、しかも抱っこしながら右手には哺乳瓶、そして、左手は・・・みてください・・・ほらトントン!」
1歳児さんが未分化な全身を駆使して、抱っこ、ミルク、トントンするこころは、お母さんが、ご家族が、保育者が彼女へ贈ってきた“Care”から人形への新たな“Care”を生成し、周りの「いのち」をこころやさしく結んでいる。これが“Care”に基づく生成のESD(持続可能な開発のための教育)であり、人間愛、環境愛へつながる「いのちの輝き」である。