『 こおり(氷)ゃ、すごい夏の遊び 』のお話
理事長 すぎもと かずひさ
梅雨明けて夏本番である。子どもたちが満喫する水遊びについてその一端を紹介しよう。
沐浴を楽しむ赤ちゃん。ぬるま湯に全身を預け、「ほーっ」と口を開けて浮かんでいる。この上なく気持ち良さ気な風情に「行水に 尿や波紋の いとをかし」としょうもない句が思わず漏れる。水遊びの原風景である。沐浴に穴の開いたビニール袋を用意する。穴の大きさや数を加減して、水の零れ落ちるさまに変化をつけていく。手を伸ばす子どもたち。手のひらに当たる感触や雫が伝い、いくつもの支流が手や身体を濡らしていく。さらにスポンジやカップを置くと、つかんだり握ったり、入れたり流したり等と、自然に水の特性を生かし、味わっている。容器は溜められること、自分の手に一時保存できること、保存したものは、他の時間と場所で活用できること等、水と関わった「もの」の特性に加え、自分の行動との関係性についても体験的に学んでいく。
園庭である。乳児期の体験を引っ提げて子どもたちが駆け回る。流れる遊び、流す遊びは「世界を広げていく遊び」である。どこまでも広げ、変化を楽しむことができるその可塑性が魅力である。水たまりの淵をスコップや棒でひっかき水流を誘う遊びからカップやジョウロに水を汲んではそこかしこに撒き散らかす遊び。友達と協力して満タンのバケツを築山のてっぺんからひっくり返す遊び等々、ルールの多い日常ではありえないことも水遊びならではの醍醐味である。概念を超えて遊びの価値に出会う瞬間こそは幼児期のかけがえのない体験といえるだろう。
泡遊びも楽しい。ふわふわの泡の感触、どんどん泡立てて盛り上がっていくさまは気持ち良すぎてずっと触っていたくなる。ふわふわから連想してソフトクリームに見立てたり、泡立てているうちに我慢できずに被ってみたり、どうにもこうにも気持ちいい。水遊びの苦手な子が全身泡だらけになって着物のようにまとっている姿に泡食っちゃうこともしばしばだ。
そして、氷遊び。冷やっこい感触は猛暑にこそうれしい。しかも保存が効く。低年齢の子どもたちには保育教諭が色とりどりの水を様々な形の容器に入れて凍らせたものを提供する。幼児になると自分たちで作った色水を凍らせる。グラデーションカラーに作った色水や草木の染料を容器に入れ、さらに花びらや木の葉を浮かべては、どんなふうになるのかを展望し、期待を膨らませていく。遊びは子どもとともに成長していく。こおり(氷)ゃ、すごい夏の遊び。