「食育は日本の誇り、保育の誇り」のお話・「子どもの歌を いつまでも」のお話

「食育は日本の誇り、保育の誇り」のお話・「子どもの歌を いつまでも」のお話

理事長 すぎもと かずひさ

毎月の誕生会の日には「エプロン・タイム」と称し、栄養教諭がプロデュースする取組が行われる。献立に登場する食材の紹介、日本地図を用いての産地やその地方の伝統行事のお話等々、単に食べるだけでなく、その由来や関連することを繋げて、子どもたちにより広く、深く味わってもらおうというねらいである。 さて、今月は新じゃがの登場であった。皮が薄いので皮ごと食べられるのが特徴だ。憧れの三角巾にエプロン姿のキッチンスタッフが新じゃがを手に身振り手振りを交えて話し始めると興味津々、可愛い眼は釘付けである。 いよいよ子どもの眼の前に並べられる新じゃがたち。もう、じっとしていられない。両手をブラブラ、足をバタバタ。期待が沸騰し始めて、落ち着きのなさが半端ない。「じゃあ、触っていいよ」の合図とともに、たちまち人気者になる新じゃがたち。目で見て、手で触れて、匂いを嗅ぐ。中には、新じゃがの言葉や歌を聞くように耳に当て、おしゃべりを始める子どもがいる。日頃のごっこ遊びが生かされる。何でも見立て、再現する。「もしも~し」と笑いの輪を広げながら以心伝心の無線電話も混線模様である。 

「食」の大切さ、「生命」の有り難さを舌以外でも味わい、学びながら、生活と遊びを往還し、子どもの食育世界は広がってゆく。人間の本能である「食べる」活動への関心は元来高い上に数々の喜びがある。「今日のごはんは何?」と、子どもたちは、毎日、キッチンへ向かう。「美味しかったよ~」、と伝えにゆく。スタッフの喜ぶ顔や反応が嬉しくてまた言葉をかけにゆく。「何切ってんの?白菜?」と尋ねる子ども。「おしい!キャベツだよ!」と応えるスタッフ。こんなやりとりを通して白菜とキャベツの違いを理解してゆく。 

目玉の取組であるリクエストメニューでは、「それ、僕が頼んだやつ?」、「わーい、やったー!」、「おうちでもつくってくれはったよ!」等々、自分の願いを届ける喜びから実現されてゆく喜び、実際にメニューとして登場する喜びを味わう。さらにおうちに帰って園での嬉しかった体験を話す喜び、今一度、おうちでメニューに取り上げてもらう喜びを体験する。

 キッチンは子どもを真ん中にした食育の基地である。保育室以上に活発に話す子どもがいる。スタッフも子どもたちの訪問が嬉しい。食育計画は、昨年改訂の認定こども園教育・保育要領でも「教育及び保育の内容並びに子育ての支援等に関する全体的な計画」の柱として位置づけられた。乳幼児期の原体験を思う日本の誇り、保育の誇りである。

目次