『遊びの地層』のお話

『遊びの地層』のお話

理事長 すぎもと かずひさ

遊びを継続的・持続的に紡いでゆく。部屋は「遊びの足跡」でいっぱいだ。例えば3歳児さん。

さっきまで絵の具で描き、ぬたくっていた段ボールや布がお店屋さんの屋根や暖簾に仕立てられ

てゆく。店先には園庭で子どもたちが、わいわいきゃあきゃあ遊びつくった色とりどりの水がペットボトルに詰められてお客さんを誘っている。

たったこれだけの場面ではあるが、この遊びを構成している「段ボール」、「布」、「水」、「絵の具」と子どもたちとの関係を紐解いてみたい。

時間を巻き戻す。段ボールや布とは赤ちゃんの頃から親しんできた。段ボールの影に隠れたり中に入ったり、布に寝転んだりくぐったり全身で味わってきた。「いないいないばぁ」と愛くるしい眼を交わし、互いの存在を確かめ合う喜びを幾度も味わってきた。友だちが包まると私もした。私が潜ると友だちもやってきた。「段ボール」や「布」が作る様々な空間。子どもたちは、心がくすぐったくなるような経験をどれほど積み重ねてきたことだろう。

「水」との付き合い。食事や入浴などの生活場面はさることながら、雨が降るたびに関わってきた。水たまりを覗き込み、アメンボウに驚喜し、侵入しては水まみれになってきた。殊に夏、その心地よさは格別であり、一気に関係を深めてきた。

絵の具。水たまりに落とされた青い絵の具の一滴は不思議な模様を描きながら流れてゆく。赤や黄が混ざる。水たまりのふちを棒でつつく。掘るように地面をこする。行く手に色が広がり流れてゆく。見て触れて楽しい。関わりに応じてもたらされるこれらの現象は一人の活動から仲間の活動へと広がってゆく。一人一人のイマジネーションが仲間のやり取りを通じてファンタジーの世界を生み広げてゆく。「段ボール」、「布」たちとの出会いは、子どもらの活動・関わり・想像によってもたらされる様々な空間と様々な色・模様の出会いを意味する。素材に抵抗のない親しみを持つ子どもだからこそ、段ボールに寝ころび天井に絵を描いたり、布に色水を流し、見上げては太陽に透ける流れを指でたどるなどの遊びを堪能するのだ。

この素材との親和感を育むことが乳幼児教育・保育の大切な要素であり、夏は全身で満喫する絶好機であった。

「遊びの地層」は幾重かな。「おうちにしよう!!」。色水で染めたばかりの布を3人、4人と力を合わせて運んでゆく。「遊びの地層」が屋根になって創る新たな世界。

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