『 保育の帆 』のお話
理事長 すぎもと かずひさ
7月に入り、子どもたちの「おめでとう」の連呼が追いかけてくる。「誕生日おめでとうボード」を見たのだ。該当月の子どもたちは自分の写真をいじったりニヤニヤしたりうれしそうである。また、他の子どもたちも写真の中から親しい友達を見つけてはそこから会話を弾ませるなど、まさに人気の場所が人気者をつくる仕掛けにもなっている。誕生会では該当月の子どもたちに三室戸・Hana花では「たかいたかい」、黄檗では「年の数のおみこしわっしょい」をプレゼントする。ところでいつの頃からか、私もプレゼントしてもらえるようになった。重い。二人がかりである。見ると卒園児のスタッフもいる。園児の時に持ち上げた彼らに担がれるのだ。さすが若人、ほどなく宙へ。「わぁーっ」とどよめく子どもたち。驚きと羨望が入り混じるがすぐに純粋な気持ちから拍手を送ってくれることが分かる。心から嬉しい。仕事のモチベーションが高まらずにはいられない。
15年を振り返ると共に未来を展望する。駅前保育所の設置では里山の自然の遊び場・古民家をセットアップした。分園の設置では高齢化社会を見据えて多世代が活用できる空間・拠点をイメージした。第二園庭の畑つくりでは野菜の栽培に加えて藍畑から藍染め活動をカリキュラムに盛り込んだ。さらに、去る6月には黄檗園の隣地を取得。「森の遊び場」の風情であり乳幼児期から学童・少年期を展望した保育の拠点として整備を進めているところである。
乳幼児期の教育・保育の方法の原則である「環境を通して行う保育」を広義に解せば「子どもと地域、子どもと自然を結ぶ活動場所の充実」であろう。「能動的学び手」としての本領が最大限に発揮できうる環境、生きる力の土台を育む経験を積み、新たな自己と出会ってゆくにふさわしい環境を用意してゆきたいと思う。
ヨットを始めた。「マザーレイク琵琶」である。卒園遠足でお世話になるようになってからいつかは「水と風の遊び場」として関わりを持ちたいと計画していた。無論取り入れ方はリスクを最大限に考慮して、対象者や環境を吟味する必要がある。ヨットでは、安全・マナーのこと、整理整頓のこと、段取り・手際のことを最初に学ぶ。何よりも自然から学ぶことは大きい。 「環境を通して行う保育」は自然との関わりが本道であろう。追い風、向かい風、無風の時もあれば嵐もある。機械の及ばない自然の中で、生きる力と喜びにはためく保育の帆である。