『 みんなぽっちのこりびん 』のお話
理事長 すぎもと かずひさ
生きているものはすべて「みんなぽっち」です。人類が誕生するはるか昔から、海に陸に山に川に何種類もの生きものがつながり合って暮らしていて、そのお陰でわたしたち人間も地球という星に住まわせてもらえるようになりました。太陽の光と熱、そして大量の雨に恵まれ海藻や魚が暮らす海が生まれ、植物や昆虫、動物が暮らす大地や森羅万象の一つ一つが幾重にもつながり、混ざりあい、地球という生命の星は、今日輝きつづけています。生きて、生かし合い、生かされているわたしたちは、決して「ひとりぽっち」ではなく「みんなぽっち」の特性を持って生きているといえるでしょう。
「みんなぽっち」はかけがえのない仲間と共に生きています。その仲間である「生きているものどうし」のことを英語で“Co-Living”といい、運動会のテーマ「みんなぽっちのこりびん」が生まれました。さて、こどもたちほど「生きているものどうし」の関係を素直かつ自然に環境との間で育みゆく存在はありません。さらに、「生きているものどうし」の範囲は無生物と思われている石や土、プラスチックなどのリサイクル素材にまで及んでいきます。その一つ一つがこどもの持つ遊びの想像力のなかで、「こりびん=“Co-Living”」として育まれ、成長してゆきます。この原体験が環境問題、食糧問題、人間どうしが傷つけ合うようなあらゆる場面において、よりよく生きる方へ生命を誘う、生涯を通貫する最も大切な想像力の育成に繋がっていることはいうまでもありません。
「こりびん=“Co-Living”」は、かかわりゆくものの一つ一つに親しみや愛情を育くんでゆきます。未分化な手指の操作性ゆえに一所懸命「ちぎった(ちぎれた)木の葉」は、自分が確かにかかわった実感とともに、生きる喜びを分かち合う仲間として、心身に取り込まれてゆきます。こどもは、つくり描くたびに、自由な思いつき、ひらめきなどを自らの遊びの創造物にのせてゆきます。それは、こどもとその仲間にとって唯一無二の物語であり、こどもと創造物が共に生を分かち合う「こりびん」に成長することを意味しています。こどもは自分の行為と遊びの創造物の双方に新たな価値をもたらしながら、無生物にさえ生命、魂までも宿らせてゆく何にもまして尊い存在なのです。
朝陽の得も言われぬなつかしさ、月星の深淵なる悠久さ、野山を駆け回り、土に水に光に遊びまみれるこども時代。石を可愛がり、土でもてなし、水に戯れ、光に色を映し、存分に生命とその世界を味わいゆく「みんなぽっちのこりびん」。