『 もりんこたちの夢の広場 』のお話
理事長 すぎもと かずひさ
「夢の広場・よいよいライブ」が終わり、ぽかぽかの余韻に包まれている。今年も大勢の在園児さん、卒園児さん、地域の方々が遊びに来られた。子ども真ん中の和やかなふれあいから醸し出される雰囲気に加え、ご多忙の中、あそび・バザー・軽食販売等の各コーナーのお手伝いを引き受けてくださった方々が織り成すあたたかい世界を満喫したひとときであった。
毎年の恒例となっているこのイベントは、わたしたち、とりわけ永年勤務するスタッフにとって、日頃、滅多に出会うことのない卒園児さんと再会する絶好のチャンスでもある。
その中の一人に某教育心理系の大学に所属する彼がいた。彼は、今夏の保育ボランティアに参加しているのだが、聞くところによると保育園時代の友人とともにライブに出演するため準備を進めているという。演目は手品。年長児当時の担任にどうしても見てもらいたいとの強いリクエストに応えて舞台袖に詰める。いよいよ彼らの出番が近づき、廊下に出て登場を迎える矢先であった。
舞台へ続くスロープの陰からひょっこり彼らが現れた。一目見て絶句、時間のねじが逆さに回る。にやにやしながら舞台へ上る彼らは、何と15年前の2月に年長児として童心のつどい(表現あそび発表会)をしたのと同じこの場所へ、当時彼らが演じた「もりんこ=冒険好きな森の妖精」の衣装を纏い、当時冒険に出かける演出の小道具として用いたのと同じような小舟に乗ってやってきた。大きく成長した眼前の彼らと幼き日の彼らがダブって見える。「あ、あかん。泣く・・・。」
してやったり、素知らぬ顔で演技を始める彼ら。あっけにとられるわたしたち。♪ももりこ りんこ も~りんこ~♪ 当時つくったテーマソングが頭の中をぐるぐるまわる。
「では、みなさん、掛け声をお願いします。僕たちが ももりこ りんこと言ったら・・・」「も~りんこ!と言ってくださいね~」演出がにくい。保育園時代からのベテランコンビは息もぴったりである。
トランプのカード当ての演出で会場からカードをひく子どもを選ぶ。「はーい!」一斉に手が上がる。選ばれて喜ぶ子ども、うらやましそうに見守る子ども、どちらもかつての彼らである。
感動からマイクを握らずにはいられないわたし。「実は彼らの衣装も小道具も年長児さんのときと同じなんです。一番の手品は彼らが年長のときと同じ格好でここにいることです。」
可愛がられて育てるものへ。そんな土壌の子どもの庭=「夢の広場」がここにある。