「 保育実習裏話 」のお話

「 保育実習裏話 」のお話

園長: すぎもと かずひさ

保育実習生を受け入れる際の事前打ち合わせの冒頭、実習生を前にしばし沈黙のわたし。こどものこと、保育のこと・・・、これから保育士を志そうという彼らに、何から話をしようか、「保育」への思いが溢れ、一言ずつしか喋れないからだのしくみがもどかしい。もどかしさがこども心への誘い水となってこどもの話にすり替わる。
 
 「僕らおとなでさえこんなことやから、これから君らが触れ合うこどもたちは、感じていることを伝えられないことが普通やったり、そのもどかしさって言ったら、おとなどころやないやろうねぇ。」
 
 「言葉を持たない赤ちゃんや話し言葉がままならない幼子たちは、どんなにたくさんの体験をしていても、それがすべて言葉として表出されることはあり得へんやろう。そやから、こどもらの活動や表情のひとつひとつ、あそびのそこかしこにこどもならではの表現があって、その世界はめちゃめちゃおもしろいねん。」とどんどん話は流れてゆく。実習生たちの瞳が輝きだす。どうかこれからの保育実習でこども世界の素晴らしさにまみれてほしいと願う。
 
 「ちっちゃいときになぁ、僕が使っているおもちゃを欲しがるこどもがいてなぁ、そんときの先生が僕のおもちゃを奪って、欲しがるこどもに渡さはったっていう悲しい思い出があるねん。しょうがないから違う遊びを始めるやろう。ほんでやっと気分転換も済んでおもしろなってきたら、それがまたそのこはうらやましいんやね。泣いてねだるものやから、先生は繰り返し僕の使っているものを取り上げてはそのこに渡すっていう悲しい思い出。次の日からすっかり登園渋りになった僕は相当親を困らせたみたい・・・。」
 
 私自身の経験と考えを通じて保育観を語る。こども時代をこどもとして生きることの大切さと厳しさを話す。家庭での子育ても保育園も学校も、おとなの態度がこどもの幸せにつながっている。
 
 「ええか、実習研究テーマは具体的にしてや。こども理解の方法とか難しいことにしたらあかんで。こどもが笑顔になる保育者の関わり、とか、楽しんでおむつ交換する方法、とか、テーマそのものがこどもの幸せと直結することにしてや!」こども時代の僕が叫ぶ。

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