「カッパランからのお知らせ」のおはなし

「カッパランからのお知らせ」のおはなし

園長: すぎもと かずひさ

わたしの愛称はカッパラン、宇治川に住んでいる。口からの出まかせではあるが、純粋無垢なこどもたちはわたしの一挙一動に真剣な眼でやってくる。幼心をもてあそぶうしろめたさを彼らの笑顔が救ってくれる。そう!ウソも方便、ファンタジー!おー、グッドアイディア!!もう少し齢を重ねたら、カッパランを卒業して「ファンタ爺(ファンタジー)」とでも名乗ろうかな?いや、「ええな爺(エナジー)」の方がいいか?どうでもいいような発想に溺れかかった瞬間、不意に待ったがかかり、悲しい思い出が蘇る。
 それは、小学二年生の夏のことであった。小柄で利発な静江(仮名)ちゃんが行方不明になったという知らせが届けられた。ともだちと二人で川遊びをしていて流されたというのだ。能天気な校庭が一瞬にして固まり、みな驚き、心配した。  数日たって、彼女は帰らぬ人となって発見された。実感の伴わないぼんやりとした気分のままクラス全員で墓前に参り、祈りを捧げた。スカートを鉄棒に巻き付けて、クルクル回る彼女は笑顔のままだ。この一件からわたしの生老病死の修業は始まった。「おもろない授業は早よ終わってほしいと思うけど、その分死ぬのが近づくということやからなぁ」と複雑な思いを打ち明けた、父との当時の会話を思い出す。  梅雨が明けて夏本番。連日の猛暑に水あそびを満喫するこどもたち。どんどん大きくなあれと願いつつ、繰り返される水の事故に気が沈む。0歳と1歳の溺死の8割は浴槽、3歳以上になると川、湖、海での溺死が多くなる。これらの数値は毎年ほとんど変わらない。「浴槽の縁と洗い場の高さが50cm未満の場合は転落する危険性が高いこと、残し湯の習慣をなくすこと、浴室の入り口には鍵をかけるなど、こどもたちが入れないような工夫をすること、こどもだけで風呂場で遊ばせないこと、小さなこどもは、バケツ、ビニールプール、洗濯機などでも溺れること…。」備えあれば憂いなし、活動前に要チェック!カッパランからのお知らせでした。

目次