『 「いきいき園」をつくろう 』のお話
理事長 すぎもと かずひさ
「今日も園に行きたいなぁ。だってなぁ、面白いこといっぱいあってなぁ、楽しいねん。」
すべての子どもがこんなふうに呟く園でありたい。それは主体的に遊び、活動し、自らの園生活に思いを馳せて関与しつづける子ども達が創る。私達はそんな彼らを保護者のみなさんと愛情深く見守り、支え、ときに半歩先ときに半歩後ろを行きつ戻りつ、道草を楽しむように共に歩むばかりである。一緒に見る風景の有り難いこと、互いの存在のもったいないこと、味わうほどに感動的で情熱的な子ども時間の物語が始まる。
赤ちゃんの歌は愛しい。泣き声が、クーイングが心の奥底に響いてくる。歌い返す。歌で呼び合うコミュニケーションは愛(め)でたい。歌は人類の最初期からある。嬉しくて歌い、悲しくて歌い、言葉を獲得する以前から心を通い合わせる。意味よりも雰囲気を分かち合う。
子どもは踊るように遊ぶ。ハイハイで動き回る。何を見ているのかな。何が面白いのかな。子どもの見ている先に視線を重ねる。興味の対象に全身全霊で向かっていく。歩くようになると一層の探索が始まる。心と身体を総動員して活動する。この心身の一体感、全体感が子どもの真骨頂であり、直観と即興に満ちている。喜びを率直に体現する境地が素晴らしい。
キラキラの瞳を追跡する。振り返る子が居れば微笑み返す。私の笑顔をホールドにして次のステップへ進んでいく。振り返る度に微笑み返す。どこから見つけてきたのか、木片で穴を掘る。鍬だ。教えられていないにもかかわらず便利を工夫している。別の場所では木の枝を両手に擦り合わせたり、打ち鳴らしたり楽器さながらに使い始める。こんな遊びを起点に愉しい「気」が巡る。
歌うように呼び合い、踊るように誘い合う。やりたいこと、面白いことの連続である。それぞれの「意欲のかたまり」がラグビーボールのように宙を舞う。ボールがどんどん増えていく。どこへ飛んでいこうが誰が受けようが構わない。自由に離合集散を繰り返す。「場」の勢いに包まれて誰もが生のエネルギーを増幅させる。
「歌」と「踊り」は人類の最初期からあった。毎日毎日、園庭を掘り起こすように遊び回る子ども達。ある人はそんな子ども達をして「古代とつながっている」という。その心は、人工知能やロボットとの共存時代になっても人間として活き活きと生きる生命の喜びを祝福しつづけること。そんな「いきいき園」をつくろう、みんなのきで。