理事長 すぎもと かずひさ
- 宇宙がさまざまな音に満ちており、そこにまさに〈天球の音楽〉が奏でられていることを実際に耳にして、一つの新しい世界が開かれる思いがした。ところがその後、さらに、 室岡一氏(日本医大教授・故人)の手で録音された胎児の聞く母親の胎内音を聴くことが出来、〈天球の音楽〉とこの母親の胎内音とが実によく似ているのにおどろいた。
- 星雲をはじめとする大宇宙の旋回運動から、地球物理的規模の台風や海流の生み出す渦巻き、人体的規模での旋回する舞踏や迷宮、植物の夏の螺旋成長や巻き貝のかたち、そして電子の螺旋軌道やDNAの二重螺旋など、極大から極小に至るまで、また無生物から生物に至るまで、ほとんどあらゆるところに見出されるのだから、おどろかされる。
先の文章は、中村雄二郎「かたちのオデッセイ」岩波書店1991からの参照です。子どもには一人一人のリズムがあります。それはどこから訪れくるのでしょうか。身近なところではお母さん(胎内)やお父さん、身近な人との「生のリズム」の響き合い、響かせ合いからだと思われがちなのですが、実際の日常を見渡しただけでも多くの環境のかかわりに気づかされることでしょう。日の出と日の入り、月の周期や季節の移ろいなど自然たちはさまざまな仕方でかかわってきますし、衣食住への多様なモノのかかわりは生活のあらゆるところに溢れています。
これを保育の場にあてはめていきます。子どもと出会うたびに一人一人の「こころのかたち」や「こころのいろ」を思います。緊張で縮んでしまったり、寂しさや悲しさでひしゃげてしまったりしているときは、笑顔や愛撫を織り交ぜながらあたためるようにかかわっていくのですが、その過程では花鳥風月さまざまな環境たちがその名の如く、「自然」に混ざり合い、「生」を響かせ合う共演者として立ち現れてきます。
また、さまざまなヒトにかかわられ過ぎて「自分のいろ」が分からなくなるほど混とんとしている子どもには喧騒から離れた場所で土や風や生きているものたちと戯れながら、自分の出したいいろ、描きたいかたちが「自然」に現れてくるようになるまで「自然」に任せて、そっと見守ったりもしていきます。
保育にもさまざまな「かたち」があります。それはすべての子どもと宇宙を結ぶ「動的なかたち」です。すべての子ども=人間と環境の「生の歓び」と「生命の記憶が躍動するかたち」、「こどもリズムのモルフェー(動的形態)」です。