宇治福祉園について

「あいだね ぷしゅけはん さーいこー」のお話

2021.8.31

「あいだね ぷしゅけはん さーいこー」のお話

理事長 すぎもと かずひさ

 遊びを通して自由を満喫し、人生の主人公になっていく子ども達。一人一人の姿が目の前に息づいている。かけがえのない子ども達の息づかいを今年の運動会テーマに掲げた。それが「プシュケ」である。古代ギリシアの言葉で呼吸。転じて生命、心、魂を意味する。その「プシュケ」に京都人ならではの、さらに、「つながり」をも意味する「はん」、を付け「ぷしゅけはん」という愛嬌たっぷりのキャラクターは生まれた。

 さて「ぷしゅけはん」は子ども達をはじめ、誰のもとにも住んでいる。さらに、生きとし生けるもののすべて、あるいは子ども達から生命づけられたもののすべてに宿っている。呼吸をするたびに現れ、ヒトとヒト、ヒトとモノなどの間を駆け巡り、子ども達が興味や愛着を持って関わっていくすべてのデキゴト、モノゴトの間に根を張り、愛の種を蒔いていく。そのひたむきな生命力は、コロナ禍にあっても「さあ!行こう!!」と周りに元気と勇気を振り撒き、夢や希望を与えてくれる。何よりもその躍動感や充実感は「最高!!」の趣に満ちている。目覚めたときには想像もできない「まだ現れてないヒトやモノとの出会い」を発見し、創造しつづける子ども達である。

 園庭の草花、成長しゆく野菜たち、蝉の大合唱、水たまりや植え込みの隙間、石の下の虫たちとの出会いに子ども達の活気は最高潮の春夏であった。ビニール袋やペットボトル、透明ホースの水に広がりゆく「わたしの色」と「ぼくの色」。歓声に脚色されながらどんどん新たな色と色とが出会い、つくられてゆく。誰彼ともなく様々な形状の容器や紙や糸などを運んでくる。「間」が繋がってゆく。小さな手が泡をつくる、フッと吹く。タライに浮かんだ泡の面に子ども達の影と「ぷしゅけはん」が踊ってみえる。素材ならではの働きが光や風のエネルギーを受けて新たな「ぷしゅけはん」が生まれてゆく。昨日から仕込んでいた氷を冷凍庫へ取りに行く。昨日の遊びが今日に蘇る。「ぷしゅけはん」の一行の愉快なノリが周りへ振動してゆく。色氷遊びの数だけ氷が現れる。閉じ込められていたお花や木の葉が溶けた氷に顔を覗かせ、にっこり光っている。

 こんなふうに遊びによって遭遇する「まだ現れていないヒトやモノとの出会い」が運動会を彩ってゆく。たとえコロナ禍で離れていても一人一人の間は、愛によって結ばれていることへの祈りと願いを捧げた「あいだのいだちゃんのあいだ」という昨年のテーマから「あいだね ぷしゅけはん さーいこー」の運動会へ。みんなの呼吸が繋がって愛の種の萌芽かな。