宇治福祉園について

「みんなのきの歌」のお話

2021.2.7

「みんなのきの歌」のお話

理事長 すぎもと かずひさ

「えんちょう(りじちょう)せんせ、うたつくってくれてありがとう~!」、可愛い声が追いかけてくる。こちらこそ、いっぱいの言葉やアイデアをくれてありがとう、やで。

3歳児クラスになると月曜から金曜日まで、毎朝・夕行われる子ども達のミーティング。今日やりたいこと、明日やってみたいことといった身近な未来への願いや希望、一日の楽しかったことや嬉しかったこと、夢中になっていること等々、子ども達が話しやすい簡単なテーマを設けて、あるいはときに自由に子ども目線で話し合う。

年齢に関わらず、話したくないときがある。無言の参加もいい。恥ずかしくてもじもじすることもある。ずっと一緒にいるから、その気持ちがちょっと分かる。もじもじするのは大切な時間。「あんな・・・、あんな・・・・」と繰り返す。安心して、ずっと待っているよ。葛藤に向き合う子どもの頑張りは、ときに雄弁な言葉以上にみんなを惹きつける。待つことの素晴らしさを学ぶ機会をもたらし、思いを交換し、気に掛け、分かち合う等の思いやりの基礎を培うひとときを与えてくれる。

勇気を出すには、どんな態度も受け容れられ、認められているといった安心感や怖れのなさが土台となる。ゆえに、そのような気持ちを誰もが持てるようになることを最優先の保育目標として掲げる。安心の風土を築いていこうとするプロセスで担任は、ミーティングの話の内容もさることながら、こういった一人一人の子どもが向き合う葛藤や困り感等の一見マイナスにとらえられがちな場がクラス全員の成長を耕す貴重な体験であることに気づかされる。一人ではついぞ学ぶことの適わない人間世界を味わい、広げていく。すべての子どもが自分のことのように友を愛し、当たり前のように尊重し合い、自然に民主的に参画・協働していくスタイルを身につけてほしいという願いが込められていく。

1月中旬になると年長児さんは、自分達が歩んできた一年を振り返り、童心のつどい(表現遊び発表会)で何をしようかと話し合いを始める。現一年生からもらった藍の種を手の平にのせてじっと見つめたあの日から、はや一年である。数々の体験を積み重ねてきた子ども達の興味・関心や体験の連続から生まれる思いや願い、発想、意見はかけがえがない。3、4歳児の子どもも自分達のやりたいこと、面白いことを全身全霊で楽しんできた。そんな言葉の数々がわたしのもとに届けられての歌である。みんなのき(気)の歌である。