「困難の中の豊かな保育」のお話
理事長 すぎもと かずひさ
新型コロナウイルスの市中感染が広がり、感染や見通しのない不安を抱えながら、ライフラインの堅持に奔走されている方、また、経済活動の影響に多大な被害を受けている方、在宅勤務と子育ての両立に奮闘されている方、知己の罹患や基礎疾患等のハイリスク要因をお持ちの方のケアやご心配等々、皆様には平時にはないご労苦に向き合い、心身共に消耗する日々をお過ごしのことと思います。心からお見舞い申し上げ、敬意と感謝の意を表します。
5月と言えば慣らし保育を終える頃の乳児さん、探索活動を自由に楽しみ始めている1、2歳児さん、「土」で遊び、鯉のぼりづくりや野菜の種蒔き等の活動に感動の声を上げている3歳以上児さんの姿が見られる頃ですが、今年は登園自粛要請へのご理解・ご協力をいただき60%の子どもさんがご家庭で過ごされている現状です。スタッフはご厚情に少しでもお応えしたいと、自粛要請が解けた後の準備やご家庭への情報発信、困難をチャンスに代える保育内容の吟味等に取組んでいます。
ご存知の通り乳幼児期にはマザリングやスキンシップ等の情愛に満ちた関わりが欠かせません。また、「子どもは子どもの中で育つ」というくらい相互主体的に関わり合いながら心身を育み、園生活をつくっていきます。この素晴らしい子どもの特性、本質には「密接」や「密集」がつきものです。感染症対策として、個々の活動、距離を置いた保育や環境の工夫、換気や戸外活動、こまめな手洗い、消毒等に留意してはいますが、そもそも保育と感染症対策は相反要因をはらんでいます。メディアでは合唱や合奏については終息予想の2年先まで自粛との声も上がっています。合唱、吹奏楽、演劇、同様の条件が当てはまる団体スポーツの全てが自粛です。園行事をはじめ、教育活動の全てを見直す必要に迫られています。夢を追いかける子どもや様々な伝統を思うと何とも言えない気持ちになります。人間は、「生体的」、「生活的」、「成育的」、「自己実現的(夢)」等の多様な観点に加え、それぞれの考えや欲求及び生活背景等により多様な生き方をしています。「子どもと子どもと大人」、「子どもと活動と夢」、「子どもと家庭と園と社会」等、感染症によって分断されそうな諸状況及び感染症の発生段階・対応ステージ等を踏まえながら、どのような未来を描き、創っていくかが問われています。そのプロセスはいずれ子ども達が未曽有の困難に出会った時の手掛かりになることでしょう、今こそ「生命を大切にする」という法人理念に光をあて、「困難の中の豊かな保育」を探究していきたいと考えています。