「遊びの場が磨きゆく子どもの秋」のお話
理事長 すぎもと かずひさ
光や風、水や土との様々な出会い方をしてきた子ども達。草花のみずみずしさに心打たれ、一粒の種の生命力に驚き、小石の裏や草の間に現れ消えるアリやダンゴムシ、チョウやバッタに歓声を上げては、泥んこになって遊びまわってきた。
「うちのお庭がジャングルで~(^^♪」の歌の歌詞じゃないけれど赤ちゃんや小さな子ども達にとって、園庭や近所の道、公園は好奇心の住処であり、道草のネタに尽きない。その世界との出会いを一人一人の仕方で仲間と絡ませ合いながら、味わいゆくところに「アクティブ・ラーニング」「環境を通して行う保育」の妙味がある。
子どもの視界に飛び込んでくる石段や地表の凸凹、生い茂った垣根の根元などなど、環境の様相のあれこれが、「のぼる」「こえる」「わたる」「くぐる」「とぶ」などの行動を誘い出す。当初は「飛び降りる」といった行動だけを楽しんでいたかと思えば、繰り返しているうちに「やーっ」とか「びゅーん」などと叫びが運動と共に放たれるころには、動きに魂が宿り、心身一体の活動が溌溂として躍動感が友の間を廻り仲間の絆を編んでゆく。
静的な場面でも心は動きつづける。木製ベンチに溶けるように抱きつき、表面を撫でる子どもの姿は、どれほど心地よい感触がその木肌にあるのかと他の者を羨ましがらせる。居心地良さそうな表情や姿は、静かにしていながら仲間を引き寄せる。このようにどの子も、それぞれの、その時々の仕方で世界との出会い方を楽しみ、披露してくれる毎日である。
繰り返すから昨日の自分や過去の体験を活かせること。その軌跡の先に今日の新たな工夫やひらめき、冒険や挑戦が生まれること。仲間の数や個性・特性がのびのび自由に発揮されるほど、自分の仕方とは異なる多様なイメージや環境とのかかわり方、モノやコトの見方や考え方に出会えること。一人一人の子どもが個性的・想像的創造に満ちた物語を生成しながら、自己と仲間の活動を流動的かつ躍動的に充実・交歓してゆく場が「遊びの場」であること。これが新たな教育・保育要領や教育課程で示されている「主体的・対話的で深い学び」の実相である。
遊びの場には子どもの「やりたい」が集まってくる。意欲の塊が爆発する場と言っていい。このエネルギーと森羅万象との出会い、紅葉や団栗との出会いが美しく降り積もり、切なくなるくらいの自然への憧憬が育まれる季節である。感動体験の連続が子どもの秋を磨いてゆく。