宇治福祉園について

『 愛は藍より出でて 藍より愛し 』

2021.2.7

『 愛は藍より出でて 藍より愛し 』

理事長 すぎもと かずひさ

「藍の栽培から染料づくり、藍染まで、いのちの循環の体験学習」を年長児さんの教育活動に取り入れてから早や6年が過ぎました。当初は、子ども達が散歩で持ち帰った花や葉っぱを鍋でぐつぐつ煮出し、草木染ごっこを楽しんでいましたが、いろいろな色が欲しくなってきた子ども達。そんなある日、「青が欲しい」との一人のつぶやきから、ワイワイガヤガヤ自然の色図鑑とのにらめっこが始まりました。こうしてたどり着いたのが「藍」でした。ところが、「藍」は簡単に手に入りません。ここから保育者の奮闘が始まります。子どもの願いを実現しようと、インターネットで「藍の種あげます」というサイトを見つけ、種を手に入れ、一から栽培しようというのでした。同じころ、「染めのおっちゃん」こと斎藤洋先生のギャラリーで染太郎さんという方の藍作品展があり、訪れた際に、今日に至るまでお世話・ご指導いただくことになる由良川藍同好会の花城さんご夫妻や宇都宮大学の佐々木和也先生との有難いご縁に恵まれました。

藍の種蒔き、育苗、苗の畑への定植、生育状況及び畑の維持・管理、刈り取り、葉の乾燥、染料のもととなるスクモ作りにおける葉の発酵状態の管理、藍建て、藍液の入った藍甕の攪拌・管理、藍染、種の採取といった一つ一つのプロセスを右も左もわからない素人が行うのですから、大雨が降ったら「ギャー」、元気がないと「ウーン」、染まりが弱いと「ガーン」等々、心配するところと手をかけるところの判断もできないままの一喜一憂が続きました。その都度、前出の先生達へメールを送っては、ご助言いただいたり、足りなくなった苗やスクモをいただいたり、遠路はるばる畑や、スクモ、甕の状態を見に来ていただいたりしてきたのでした。このようにして、何とか今日まで一人一人=すべての子どもが種蒔きに始まる全工程を行い、自ら見守り続けてきた藍液で、世界に一着しかない個性豊かなTシャツを着て巣立っていくことができたのです。

3月、前年度の年長さんから、「藍の種」をもらった年長さん。小さな手のひらに、さらに小さな一粒の種を載せ、見つめた感動の出会いから、コロナ禍の中、それでも、ようやく梅雨の晴れ間の昨日、藍の葉の「一番刈り」を行うことができました。

青々と伸びゆく藍と子ども達の姿に「青は藍より出でて 藍より青し」の故事とその子を思い「手間をかける愛しい日々」を実践する大人の姿を重ね「愛は藍より出でて 藍より愛し」との掛け言葉が重なるように浮かんできます。